Dungeon Synth(ダンジョンシンセ)とは
中世の地下迷宮や古い城を思わせる情景を、安価な電子音だけで描く様式である。使われる音色は意図的に貧弱で。管弦楽やパイプオルガン、笛、鐘、合唱を模した音が中心だが、本物らしく聞こえることは目指されない。録音はこもった音質で、意図的に
中世の地下迷宮や古い城を思わせる情景を、安価な電子音だけで描く様式である。使われる音色は意図的に貧弱で。管弦楽やパイプオルガン、笛、鐘、合唱を模した音が中心だが、本物らしく聞こえることは目指されない。録音はこもった音質で、意図的に音の輪郭をぼかす処理が施される。テンポは遅い。ただし、Jim Kirkwoodの『Where Shadows Lie』にはドラムマシンが入り、『Uruk-Hai』には行進曲風の打楽器がある。旋律は短く単純な音型を延々と反復する形が基本で、和音の変化も最小限に留められる。使われる音階には中世を思わせる旋法が選ばれ、長調短調の枠から外れた響きが好まれる。曲は数分から十数分に及び、展開をほとんど設けずに同じ情景を保ち続ける。歌はほぼ用いられない。作品の見せ方も様式の一部で、装丁には手描きの城や森、剣と魔法の物語の挿絵風の図像が用いられ、曲名には架空の地名や王国の名が並ぶ。
成り立ち
起源は1990年代初頭とされ、ノルウェーのブラックメタルの周辺で大きく育ったが、英国のJim Kirkwoodの作品(1990〜91年)を最初期に挙げる見方もある。当時この領域は極めて暴力的で、放火や殺人を含む事件が続いていた。その渦中にいたのがヴァルグ・ヴィーケネスで、彼はバーズムの名で活動していた。1993年に彼はメイヘムのユーロニモスを殺害し、1994年に有罪判決を受けて服役する。獄中でシンセ以外の楽器が許されなかったため、彼はシンセサイザーとテープレコーダーのみで作品を制作した。こうして制作され、1997年に発売された『Dauði Baldrs』と、1999年に発売された『Hliðskjálf』が、この様式の代表的な起点のひとつとされる。ただし、Mortiisが1993年に使った「dark dungeon music」という語や、Jim Kirkwoodの1990〜91年の作品のほうが、早い起点の候補である。同時期には、ノルウェーのモルタイン、ドイツ(ブライザッハ)のデプレッシヴ・サイレンスなど、同種の実践が各国で並行して進んでいた。いずれもブラックメタルの周辺にいた人物である。ただし当時この音楽に統一的な名前は定着しておらず(Mortiisは1993年から「dark dungeon music」という語を使っていた)、単に暗い環境音楽として扱われていた。ダンジョン・シンセという呼称が定着するのは2010年代である。インターネット上の音楽共有の場で、この種の古い録音が再発見され、聴き手の側から名前が与えられた。すなわち、様式が成立してから20年近く経って、後世の聴き手が命名したという珍しい経緯を持つ。この再発見を境に、当時を知らない若い制作者が大量に参入した。2011年のブログ開始以降に共同体が形成され、2013年にはsubredditができた。2018年以降はライブや祭典が定着した。装丁は手描きで、作品は音楽配信の個人ページで無料に近い価格で配布されるのが通例となった。かつて刑務所という極限の制約から生まれた形式が、現在では自室で一人静かに作られる音楽として広く受け継がれている。
代表曲
- Depressive Silence II (Depressive Silence)
- Tomhet (Burzum)
- Ham Som Reiste (Burzum)
- Født til å Herske (Mortiis)
- Soul Wandering (Summoning)
- Dawnlight Warms the Castle Stone (Fief)
- Depths of the Oceans (Depressive Silence)
- Edge of Town (Dim)
- Medieval Breeze (Fief)
- Dreams (Depressive Silence)
- Ellendrial's Lullaby (Dim)
- Clandestine (Dim)
ルーツ(影響を受けたジャンル)
Black Metal、 Ambient
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