Electro-Funk(エレクトロファンク)とは
1980年代前半に生まれた、機械の音だけでファンクを組み立てようとした音楽である。中核にあるのはRoland TR-808というリズムマシンで、その低音の太鼓は実際の楽器に似ておらず、減衰を調節して長く伸ばすことができる。この長く
1980年代前半に生まれた、機械の音だけでファンクを組み立てようとした音楽である。中核にあるのはRoland TR-808というリズムマシンで、その低音の太鼓は実際の楽器に似ておらず、減衰を調節して長く伸ばすことができる。この長く尾を引く低音が、音楽の土台であると同時に、メロディーのような役割も担う。手拍子を模した音や、金属的な高音の刻みも同じ機械から供給される。リズムは四つ打ちではなく、拍を細かく区切って裏拍へずらす並べ方が使われ、機械的でありながら跳ねる感触を持つ。上に重ねる音には、初期のシンセサイザーによる金属的で冷たい音色が、同じ形をくり返しながら置かれ、和音はほとんど鳴らされず、一音ずつの線が絡み合う。人の声は歌われるより、声を合成音に変えるボコーダーや、口にくわえた管を通すトークボックスによって加工され、人間とも機械ともつかない響きに変えられる。歌詞は宇宙、ロボット、未来都市、そして踊ることそのものを扱い、感情をぶつける表現はほとんどない。この、意図的に人間味を排除した冷たさが、当時のファンクやディスコの温かさとの決定的な違いであり、後のテクノやマイアミ・ベースなどにも影響を与えた。
成り立ち
決め手となった作品の一つは、1982年に発表されたAfrika Bambaataaのプラネット・ロックである。ニューヨークのブロンクスで、かつて暴力的な集団に属していたAfrika Bambaataaは、音楽によって暴力を置き換えることを掲げてZulu Nationという組織を作り、DJとして活動していた。彼は選曲において人種や国籍を問わず、あらゆるレコードを使うことで知られていた。この楽曲では、ドイツのKraftwerkの二つの楽曲、すなわち「Trans-Europe Express」の旋律を再演奏し、「Numbers」のビートをTR-808で再構成するという方法が採られた。当時のサンプラーは使われていない。制作を担ったArthur Bakerと、鍵盤を弾いたJohn Robieがこれを実現している。ヨーロッパの白人による冷たい電子音楽を、ニューヨークの黒人が自分たちの踊りの音楽として作り替えたというこの経緯は、大西洋を行き来する影響関係の象徴として、繰り返し語られる。なお、Afrika Bambaataaには2016年以降、児童への性的虐待の告発がある。同年、同じくニューヨークではバルバドス系のGrandmaster Flashの一派が社会批判の楽曲を発表しており、ヒップホップはこの時期に急速に語彙を広げていた。電子ファンクの流れはすぐに各地へ広がる。ロサンゼルスではEgyptian Loverらが、より性的で享楽的な方向を打ち出し、この地域独特の系統を作った。デトロイトでは、Juan AtkinsらがラジオのElectrifying Mojo(本名Charles Johnson)の番組を通じてKraftwerkやP-Funk、Princeを聴いたことが背景となり、後にテクノが生まれることになる。この番組は、Kraftwerkなどの電子音楽から、Prince、Parliament-Funkadelicまでを流した。ニューヨークではMantronixが続き、イギリスではこの音はブレイクダンス文化と結びつきながら広まった(1983年10月から「Street Sounds Electro」シリーズが大衆に広めた)。1980年代半ばには流行としては急速に古びる。より生々しいサンプリングを用いる新しいヒップホップが台頭したためである。しかしその後に残したものは非常に大きかった。TR-808の低音は現在のトラップやポップスに至るまで用いられ続け、声を機械で加工するという発想はその後のあらゆる分野に浸透し、そして機械で作られたダンス音楽という考え方そのものが、テクノやマイアミ・ベースなどに影響を与えた。
代表曲
- Word Up! (Cameo)
- Jam On It (Newcleus)
- Rockit (Herbie Hancock)
- More Bounce to the Ounce (Zapp)
- Dance Floor (Zapp)
- C.O.D. (I'll Deliver) (Mtume)
- Heartbreaker (Zapp)
- Computer Love (Zapp)
- Magic's Wand (Whodini)
- King of the Beats (Mantronix)
- Al-Naafiysh (The Soul) (Hashim)
- Future Shock (Herbie Hancock)
ルーツ(影響を受けたジャンル)
Funk、 Hip Hop
影響を与えたジャンル
Detroit Techno、 Miami Bass
地図でElectro-Funk(エレクトロファンク)のルーツをたどるには、JavaScriptを有効にして 音楽ジャンルルーツ辞典 を開いてください。