Post-Dubstep(ポストダブステップ)とは
ダブステップの土台を出発点にしながら、ドロップで解放するという約束事を捨て、室内で聴くための暗く沈んだ、内面を見つめる音楽へ作り替えた系統。BPMは130前後だが、四つ打ちに近づけたり、逆に拍を曖昧にぼかしたりと固定されず、キック
ダブステップの土台を出発点にしながら、ドロップで解放するという約束事を捨て、室内で聴くための暗く沈んだ、内面を見つめる音楽へ作り替えた系統。BPMは130前後だが、四つ打ちに近づけたり、逆に拍を曖昧にぼかしたりと固定されず、キックが1小節に2回しか鳴らないハーフタイムの隙間を活かす点だけが共通する。音の手ざわりが最大の主題で、レコードの針音、テープのヒスノイズ、劣化したMP3の歪み、雨や車内の環境録音などが意図的に混ぜられ、音楽全体が古い記憶の再生のように濁って聴こえる。歌は女性ボーカルの断片をピッチシフトで男女の別が分からなくなるまで加工したものが多く、意味の取れない語が繰り返される。ベースは唸らず、和音として長く伸びるか、あるいはほとんど鳴らない。和音はソウルやR&Bのコード進行を借りた甘さを含み、そこに残響と欠落が加わることで懐かしさと喪失感が生じる。クラブで踊るためではなく、深夜のヘッドフォンや帰り道の電車で聴かれることを前提に構成されており、ダブステップの「体で感じる低音」を「頭の中で反響する低音」へ置き換えた点が決定的な違いである。
成り立ち
2000年代末のイギリスで、ダブステップが米国経由の攻撃的な路線へ傾く一方、その反対方向へ深く沈んでいった作家たちのまとめた呼び名として音楽ジャーナリズムが用い始めた呼称である。先駆・影響源として広く挙げられるのがロンドンのBurial(William Bevan)で、2006年のアルバムBurial、2007年のUntrue において、ダブステップのリズム構造の上に、切り刻んだR&Bの歌声、レコードのノイズ、深夜のロンドンの環境音を重ね、踊るための音楽から夜の都市を描く音楽へ変えた。Untrue はマーキュリー賞にノミネートされ、匿名を貫いた本人の正体を巡る報道も相まって、シーンの外側にまで届いた。並行して、ロンドンのJames Blake が2010年前後にCMYK、Klavierwerke といったEPで、歌声を極端に加工しつつピアノとゴスペル的な和声を持ち込み、2011年のアルバムJames Blake でメジャーの領域へ橋渡しした。ロンドンのMount Kimbie(Dominic MakerとKai Campos)は2010年のCrooks & Lovers で、生楽器の録音と細かな編集を組み合わせた手触りの音を提示した。レーベルではロンドンのHyperdub(Steve Goodman、DJ名Kode9 が2004年に設立)が中心で、Burial のほかZomby、Ikonika、Cooly G らを送り出した。ほかにR&S Records、Hessle Audio、Hotflush Recordings が重要な受け皿となった。「ポスト・ダブステップ」という語は、Mount Kimbieの2009年のEPの時点で既に使われていたとされ、Mount Kimbieがこの語の起源と結び付けられ、James Blakeがその「顔」とされる。Mount Kimbie自身はこの名前について「quite indifferent(まったく無関心)」と述べ、Blakeは自分のデビュー作をダブステップ作品ではないと位置づけた。この潮流は2013年ごろまでに一段落したが、この一群が示した「歌声を素材として加工する」「低音を静けさの中に置く」という手法は、のちに2010年代のUKベースやオルタナティヴR&Bなどに吸収された。
代表曲
- Limit to Your Love (James Blake)
- Wildfire (SBTRKT)
- Pharaohs (SBTRKT)
- Untrue (Burial)
- Crooks & Lovers (Mount Kimbie)
- Mayor (Mount Kimbie)
- Natalia's Song (Zomby)
- The Light (SBTRKT)
- Ruby (Mount Kimbie)
- Field (Mount Kimbie)
- Tears in the Rain (Zomby)
- Euphoria (Zomby)
ルーツ(影響を受けたジャンル)
Dubstep、 UK Bass、 Future Bass、 Deconstructed Club
影響を与えたジャンル
Future Bass、 UK Bass、 Deconstructed Club
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