Acid Trance(アシッドトランス)とは
トランスの組み立てに、Roland TB-303の唸る音色を組み込んだ系統。アシッドハウスと機材を共有しながら、テンポを上げ、トランス特有のブレイクダウンと上昇の構成に組み込む点で分かれる。テンポは132〜145BPM程度。土台は
トランスの組み立てに、Roland TB-303の唸る音色を組み込んだ系統。アシッドハウスと機材を共有しながら、テンポを上げ、トランス特有のブレイクダウンと上昇の構成に組み込む点で分かれる。テンポは132〜145BPM程度。土台は四つ打ちのキックと、その裏に置かれる8分音符のオフビート・ベース。その上でTB-303が16ステップのシーケンスを回し、カットオフとレゾナンスのつまみが曲全体を通してゆっくり動かされる。この操作が、メロディーのような唯一の展開を受け持つ。多くの場合303は複数台が重ねられ、それぞれ違うフィルター設定と歪みの量で、層になって重なる。アシッドテクノと異なり、こちらにははっきりした和音と感情の表現があり、ブレイクダウンでは長いパッドと壮大なメロディーが現れる。ブレイクダウン後の復帰では、白色雑音のライザーとスネアの加速する連打によって緊張が最大化され、そこにキックと303が同時に戻る瞬間が最大の見せ場になる。和音は和声的短音階(ハーモニックマイナー)が多く、切迫した情感を作る。曲の長さは5分台から9分程度。ヴォーカルはほとんどなく、あっても加工された短い叫びや朗読のサンプル。全体として、アシッドの機械的な音色と、トランスの人間的な高揚が同居する点がこの系統の魅力になっている。
成り立ち
アシッド・トランスは1980年代後半にヨーロッパで生まれたとされ、最もよく知られているのはベルギーである。起源が1曲で定まるという定説はないが、ドイツのフランクフルトで、Sven Väthらが1992年に設立したレーベルHarthouseから同年に発表されたHardfloorの「Hardtrance Acperience」は、初期の重要作の一つとされる。Hardfloorはラモン・ツェンカーとオリヴァー・ボンドツィオのデュオで、複数のTB-303を同時に鳴らして層を作るという手法を確立した。これは4曲入りのEP(1992年7月発売)で、代表曲「Acperience 1」は約9分あり、複数の303を使った構成が後続のお手本になった。同じHarthouseからはSven Vath自身の作品やOliver Liebの各種名義が出され、1993年前後のドイツのクラブでこの音が聴かれた。イギリスでは、1988年のアシッドハウス以降TB-303の音が既に馴染んでおり、レイヴのテンポ上昇と結びついて独自に発展した。Union Jack、Emmanuel Top(フランス。アシッドテクノの制作者とされることもある)、Yves Deruyterやベルギーのシーンも重要な役割を果たした。とりわけEmmanuel Topの1994年「Turkish Bazar」や同年11月発売の「Acid Phase」は、303の音を極限まで引き伸ばした構成で知られる。スロベニアのUMEKといった作家が加わった。この時期の背景として、TB-303が1984年に生産終了して中古価格が暴落していたことが挙げられる。1990年代前半には比較的安価に入手できたため、多数の制作者が同時にこの音を扱えた。しかし1990年代半ばから後半にかけて、この機材の価値が認識されて価格が高騰し、また流行としてのアシッド・トランスも定型化して飽きられた。1996年以降、トランスの主流はより旋律的で歌もの寄りの方向(ユーロ・トランスやアップリフティング・トランス)へ移り、アシッド・トランスは急速に端に追いやられた。同時期にアシッドの語彙はテクノ側のアシッドテクノや、ハードハウス、ハードトランスへ分散していく。2000年代にはこの系統は主流から退いたが、Hardfloorは作品を出し続けるなど活動は続いた。2010年代後半から復興が起きる。ハードウェアの複製機やソフトウェアによる303の再現が容易になったこと、そしてレイヴ文化の再評価が重なった結果で、若い制作者が1990年代前半の音を意識的に引用するようになった。近年ではハードグルーヴやハードトランスの復興の中で、303の音が再びヨーロッパのクラブの中心に戻っている。
代表曲
- Liquid Skies (Kai Tracid)
- 4 Just 1 Day (Kai Tracid)
- Acid Eiffel (Choice)
- Stella (Jam & Spoon)
- L'Esperanza (Sven Väth)
- Enlightened Evolution (Astral Projection)
- Turkish Bazar (Emmanuel Top)
- Papillon (Union Jack)
- No Fate (Zyon)
- Angelic Particles (Hallucinogen)
- Two Full Moons and a Trout (Union Jack)
- Positron (Cygnus X)
- Mi-Loony-Um (Hallucinogen)
- Cactus (Union Jack)
- An Accident in Paradise (Sven Väth)
- Positive Education (Slam)
- People Can Fly (Astral Projection)
ルーツ(影響を受けたジャンル)
Trance、 Acid House
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