Euphoric Trance(ユーフォリックトランス)とは
トランスの中でも、感情の盛り上がりそのものを最大にすることに、すべてを合わせた系統。名称の euphoric は多幸感を意味し、聴き手を涙が出るほどの感動へ押し上げることが目標になる。テンポは135〜140BPM前後。四つ打ちのキ
トランスの中でも、感情の盛り上がりそのものを最大にすることに、すべてを合わせた系統。名称の euphoric は多幸感を意味し、聴き手を涙が出るほどの感動へ押し上げることが目標になる。テンポは135〜140BPM前後。四つ打ちのキックとオフビート・ベースの骨格は共通だが、この系統ではメロディーの比重が圧倒的に大きい。主なメロディーは長い音符で作られ、上行して頂点に達し下降するという明確な弧を描く。和音は長調の和音に基づく流れが多いとされ、それが高揚と憧憬を同時に生む。音色はスーパーソウ波形を大量に重ね、コーラスとリヴァーブで幅を極端に広げた壁のような厚みが特徴。曲の組み立てが最も重要で、序盤にリズムだけの導入を置き、中盤で全ての打楽器を止めるブレイクダウンへ入る。ブレイクダウンは2分近くに及ぶこともあり、ピアノや弦楽器風のパッドと歌が、リズムなしで感情を最大まで蓄積する。その後、白色雑音のライザーが徐々に音量と音程を上げ、スネアの連打が4分音符から32分音符まで加速し、一瞬の完全な無音を挟んでからキックと主旋律が同時に戻る。この戻る瞬間が、曲全体の存在理由といってよい。ヴォーカルは女性の伸びやかな歌唱で、飛翔、解放、永遠といった抽象的な言葉を歌う。アップリフティング・トランスとほぼ同義で扱われることも多い。
成り立ち
1990年代後半から2000年代前半にかけて、オランダ、ドイツ、イギリスで広がった(名称は1996年にプログレッシブ・トランスの後に生まれたとされる)。イギリスのクラブ文化を起点とする見方もある。1997年にはGatecrasherがシェフィールドのRepublic(定員1350人)に定着し、Godskitchenは1996年にケンブリッジやノーサンプトンで始まったのちバーミンガムなどへ広がり、数千人規模の特設イベントも開くようになり、そこで求められたのが、巨大な会場で数千人が同時に感情の頂点を共有できる音楽だった。ブレイクダウンを極端に引き伸ばし、復帰の瞬間に全員が両手を上げるという体験が、この形式の設計目標として明確化された。制作面ではオランダの貢献が大きい。Ferry Corstenは複数の名義で、とりわけSystem Fとして1999年に「Out of the Blue」を発表し、この系統の代表作となった。同じくTiestoは1999年の「Sparkles」やDelerium「Silence」のリミックス(2000年)で世界的成功を収めた。Armin van Buurenは2001年からラジオ番組A State of Tranceを開始し、この音楽の世界的な流通網を構築した。ドイツではATBやPaul van Dykが、イギリスではAbove & Beyond(2000年結成)、Chicane、Solarstoneが加わった。Above & Beyondは2000年(一説に1999年夏)にレーベルAnjunabeatsを設立し、この系統の中心的な組織になっている。フィンランドのSuper8 & Tab、オーストラリアのtyDiといった各国の作家も続いた。2000年から2003年が商業的な頂点で、イビサ島のクラブとイギリスの大型イベントが市場を支えた。しかし2004年前後から反動が起きる。感傷的すぎる、定型的で予想がつく、薬物の効果に依存した安易な感動であるといった批判が、テクノやハウス、そしてミニマルの側から集中的に向けられた。この時期にトランス全体が「ダサい音楽」という扱いを受け、多くのクラブが編成を変えた。市場は大きく縮小し、いくつもの主要レーベルが閉鎖した。しかし共同体は解散せず、Armin van BuurenのA State of Tranceが世界各地で大型イベントを続けたことで存続の核が保たれた。2010年前後のEDMの隆盛では、この系統が完成させた「長いブレイクダウンと爆発的な復帰」の構造が、そのままビッグルームやプログレッシブ・ハウスに移植された。近年は当時の作品が若い世代に再発見され、2020年代にはトランスの復興が各地で報告されている。
代表曲
- Sun & Moon (Above & Beyond)
- Be Your Sound (Cosmic Gate & Emma Hewitt)
- Concrete Angel (Gareth Emery)
- We Control The Sunlight (Aly & Fila)
- Do You Dream? (Markus Schulz)
- Alone Tonight (Above & Beyond)
- Helsinki Scorchin' (Super8 & Tab)
- Body of Conflict (Cosmic Gate)
- Sunrise (Aly & Fila)
- Velvet Morning (Kyau & Albert)
- Linking People (Giuseppe Ottaviani)
ルーツ(影響を受けたジャンル)
Trance、 Euro Trance
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