Euro Trance(ユーロトランス)とは
トランスの組み立てを、大衆向けのポップスとして通用する形に整えた系統。四つ打ちのキックとオフビート・ベースという骨格はトランス一般と共通するが、メロディーの扱いが決定的に違う。ここでは覚えやすく歌える主なメロディーが中心に置かれ、
トランスの組み立てを、大衆向けのポップスとして通用する形に整えた系統。四つ打ちのキックとオフビート・ベースという骨格はトランス一般と共通するが、メロディーの扱いが決定的に違う。ここでは覚えやすく歌える主なメロディーが中心に置かれ、しばしば一度聴けば口ずさめる単純さで作られる。このメロディーはシンセのリードで鳴らされるか、女性歌手が歌う。ヴォーカル入りの場合は明確な歌もの構成をとり、Aメロ、サビ、間奏という歌謡曲的な形式に、トランスのブレイクダウンと復帰が組み込まれる。和音は自然短音階のくり返しが多く、しばしば長調へ抜けて開放感を出す。音色はスーパーソウ波形を重ねた厚いリード、ゲート処理をかけた刻むパッド、そして明るいピアノの和音。ブレイクダウンでは全ての打楽器が抜け、ピアノかパッドと歌だけになり、そこからライザーとスネアの連打で復帰する。曲は短く整理され、ラジオでの放送とシングル盤としての流通を前提とする。歌詞は愛、別れ、飛翔、夜といった抽象的で感情的な主題を扱う。プログレッシブ・トランスやサイケデリック・トランスと比べて、深さや実験性よりすぐに伝わる感動と分かりやすさが優先されている点で、はっきり区別される。
成り立ち
1990年代後半に、ハードトランスとユーロダンスの融合として広まった(定義には諸説ある)。土台となったのは、1990年代前半のヨーロッパで既に確立していたユーロダンスの市場である。ドイツのSnapやCulture Beat、Real McCoyといったグループが、四つ打ちに女性の歌と男性のラップを乗せる形式でチャートを席巻しており、レコード会社にはダンス音楽をポップスとして売る仕組みが整っていた。ここへトランスの語彙が流入した。大衆化の契機となった作品としてはRobert Milesの「Children」(1995年発表、1996年にヨーロッパで大ヒット)が挙がる。イタリアの制作者による、ピアノの旋律を軸にした器楽曲で、12か国以上で1位を獲得し、全英では最高2位だった。この曲はユーロトランスとは別系統のドリーム・トランスに分類されるが、トランスが大衆の耳に届くことを証明した。同時期にATBの「9 PM (Till I Come)」(1998年10月発売)がギターを加工した音色で、1999年に全英1位(トランス曲として初)を獲得し、Sash!、Blank & Jones、Fragma、Alice Deejayが続いた。オランダではTiesto、Ferry Corsten、Armin van Buurenが登場し、とりわけTiestoは2002年の単独公演を経て、2003年にスタジアムで単独公演(2万5千人超)を行い、2004年のアテネ五輪開会式でDJとして演奏するに至った。ドイツではPaul van Dykが「For an Angel」(1998年版は全英ダンス・チャート1位)などのクラブ・ヒットを出し、Kontor RecordsやZeitgeistといったレーベルが市場を支えた。人気の頂点は1998年末から2000年頃とされ、ヨーロッパ各国のヒットチャートの上位を恒常的に占めた。イギリスではGatecrasherやGodskitchenといったクラブが人気を集め(クラブの定員は千人台だったが、特設会場や野外のイベントでは2万人超を集めた)、派手な装いの客層とともに社会現象になった。しかし商業的成功は激しい反発も招いた。テクノやハウスの側からは、感傷的で定型的、大量生産の産物であるとして軽蔑され、euro tranceという語自体が侮蔑的に用いられることも多かった。実際に、同じコード進行と構成を持つ楽曲が大量に流通し、市場は2003年頃に飽和する。2004年以降は急速に退潮し、多くのレーベルが撤退した。ただし完全には消えず、東欧やロシア、そしてハンズアップやハードダンスといった派生の中で存続した。2010年前後のEDMの隆盛では、このジャンルが確立したブレイクダウンと復帰の構造がそのままEDMにも受け継がれた。近年は1990年代後半のトランスを懐かしむ層と、当時を知らない若い世代の双方から再評価が進んでいる。
代表曲
- Another Way (Gigi D'Agostino)
- 9PM (Till I Come) (ATB)
- Exploration of Space (Cosmic Gate)
- Touch Me (Rui da Silva)
- Castles in the Sky (Ian Van Dahl)
- Promises (Andain)
- Not Enough Time (Emma Hewitt)
- Ligaya (Gouryella)
- Lizard (Mauro Picotto)
- Kiss That Sound (Pulsedriver)
- Losing You (The Entranced)
ルーツ(影響を受けたジャンル)
Trance、 Hands Up
影響を与えたジャンル
Euphoric Trance、 Trance、 Hands Up
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