Crossover Thrash(クロスオーバースラッシュ)とは
ハードコア・パンクの短さとまっすぐな感情の勢いに、スラッシュメタルの速い刻みと歪んだギターを掛け合わせた音楽である。曲は純粋なハードコアより長めになる傾向があるが、S.O.D.のように極端に短い曲を含むものもあり、導入から終わりま
ハードコア・パンクの短さとまっすぐな感情の勢いに、スラッシュメタルの速い刻みと歪んだギターを掛け合わせた音楽である。曲は純粋なハードコアより長めになる傾向があるが、S.O.D.のように極端に短い曲を含むものもあり、導入から終わりまで一気に走り抜ける。テンポは非常に速いが、常に全力なのではなく、曲の途中で突然半分の速度に落ち、身体をぶつけ合って踊るための重い部分が挿入される、この落差がいちばんの聴かせどころである。ギターは手首を高速で往復させて短い和音を刻む奏法を基本とし、ソロは無秩序に音を撒き散らす短いものか、そもそも省略される。ドラムはスネアを裏拍で連打する走るような刻みと、ハードコア特有の前のめりな2ビートを使い分ける。ヴォーカルは歌わずに叫び、要所では複数人が声を揃えて拳を突き上げるための短い掛け声を入れる。歌詞は権力への嫌悪、警察、宗教、戦争、日常の苛立ちを扱う一方、意図的に馬鹿馬鹿しい題材を選ぶ悪ふざけも多く、深刻さと不真面目さが同居している。スケートボード文化と密接に結びついており、その速度感と危険さが音の性格をそのまま説明している。純粋なスラッシュメタルと比べると、パンク寄りの音で、ハードコアよりメタルの要素が多い。
成り立ち
1980年代前半のアメリカでは、ハードコア・パンクとヘヴィメタルの聴き手は互いを敵のように見ており、髪型も服装も客層も明確に分かれていた。この壁を崩した要因の一つがスケート文化だったとされる。ライブでの共演や客層の共有を通じて、両者の混ざり合いが進んだ。テキサス州ヒューストンで結成されたD.R.I.は、当初は数十秒の曲を並べる純粋なハードコアだったが、次第にメタルの刻みを取り入れ、1987年に発表した作品の題名がクロスオーバーで、この呼称はそれに由来するとされる。カリフォルニア州ヴェニスのSuicidal Tendenciesは、ギャングとの関係を噂された荒れた気風を持ち込み、ノースカロライナ州ローリーのCorrosion of Conformityは1985年の作品でこの融合をより攻撃的な形で示した。ニューヨークではCro-Magsが1986年に発表した『The Age of Quarrel』で、ハードコアにメタルを持ち込み、街の暴力とクリシュナ意識への傾倒が奇妙に同居した独自の世界観を打ち立て、ニューヨーク・ハードコアの伝説となる。1985年には、スラッシュメタルのバンドAnthraxのScott IanとCharlie Benante、元AnthraxのDan Lilkerが、Billy Milanoを歌手に迎えてS.O.D.を結成し、録音とミックスを数日(録音は7月2〜3日)で済ませた作品を発表した。これは商業的にも成功し、この分野を広く知らしめた一方、歌詞が同性愛・女性・外国文化を扱って論争を呼んだ。メンバーは「冗談」だと説明しており、一方でこの作品は名盤としても評価されている。スケートボード専門誌のThrasherがハードコアやパンクを中心に紹介しつつメタルも取り上げたことも、混在を後押しした。1990年前後には流行が一段落するが、この時期に生まれた、速い部分と重い部分を交互に配置する構造は、1990年代初頭のメタルコアの形成に大きな役割を果たした。2000年代以降は、当時の音を意識的に再現する新しい世代が世界各地に現れ、短く速く馬鹿馬鹿しいという価値観は今も更新され続けている。
代表曲
- Institutionalized (Suicidal Tendencies)
- Executioner's Tax (Swing of the Axe) (Power Trip)
- March of the S.O.D. (S.O.D.)
- Unleash the Bastards (Municipal Waste)
- Speak English or Die (S.O.D.)
- Critical Mass (Nuclear Assault)
- We Gotta Know (Cro-Mags)
- I Don't Need Society (D.R.I.)
- Nightmare Logic (Power Trip)
- Age of Quarrel (Cro-Mags)
- Violent Pacification (D.R.I.)
- Born to Party (Municipal Waste)
ルーツ(影響を受けたジャンル)
Thrash Metal、 Punk Rock
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