Delta Blues(デルタブルース)とは
ミシシッピ州北西部、ミシシッピ川とヤズー川に挟まれた広大な綿花地帯「ミシシッピ・デルタ」の労働の中から生まれた、最も古い部類に入るブルースの様式の一つ。ギターやハーモニカを主役にした少人数の編成で(録音ではギター1本と自分の声だけ
ミシシッピ州北西部、ミシシッピ川とヤズー川に挟まれた広大な綿花地帯「ミシシッピ・デルタ」の労働の中から生まれた、最も古い部類に入るブルースの様式の一つ。ギターやハーモニカを主役にした少人数の編成で(録音ではギター1本と自分の声だけの弾き語りも多いが、実際の演奏は複数人で行うほうが一般的だった。弾き語りの独奏を重視する見方もある)、貧困、失恋、放浪、孤独といった人生の重みを歌う。特徴的な奏法の一つは「スライドギター(ボトルネック奏法)」で、ガラス瓶の首を折ったものや金属の筒を左手の指にはめ、弦を押さえずに滑らせることで、西洋音楽の半音の枠に収まらない滑らかな音程変化を生み出す。この人の泣き声のようにうねる音色が、歌声と会話するように交互に鳴らされる。演奏はきっちりした小節数に収まらないことも多く、歌い手が感情の赴くままに小節を伸び縮みさせる。テンポは曲によって幅があり、同じ短い型を繰り返しながら情念を掘り下げていく。当時の劣悪な録音環境が残したノイズと歪みも相まって、遠い時代から幽霊の声が届いているような、独特の生々しさを持つ。後のロックやソウルなど、多くのポピュラー音楽の源流のひとつに位置する音楽である。
成り立ち
20世紀の変わり目にはすでに何らかの形で存在していたとされ、最初期の録音が残る1920年代から30年代にかけて、ミシシッピ・デルタ地域で綿花栽培に従事していたアフリカ系アメリカ人の間で広がった。奴隷制廃止後もなお、小作人として過酷な労働と人種差別に縛られていた人々の生活が、その音楽的土壌である。Charley Pattonは「デルタブルースの父」と呼ばれ、「Pony Blues」(1929)などの録音を残すとともに、ギターを背中に回して弾くといった派手なパフォーマンスでも知られ、後のロックのステージ作法の原型ともされる。Son Houseは、伝道師と演奏家の間で葛藤しながら、激しい情念を叩きつけるようなスライド奏法で強い影響を残した。Robert Johnsonは、わずか29曲の録音を残して1938年に27歳で謎の死を遂げたが、「深夜の十字路(クロスロード)で悪魔に魂を売り、ギターの腕を手に入れた」という伝説(もとは別のブルース歌手Tommy Johnsonの話とされ、曲の歌詞自体に悪魔は出てこない)とともに語られ、ブルース史上最も神話化された人物となった。彼の「Cross Road Blues」(1936)は、後にEric Claptonが在籍したバンドCreamが「Crossroads」の題で1968年にライブ録音してカバーし(アルバム『Wheels of Fire』所収)、世界的に知られることになる。Skip Jamesは、ベントニア派の代表とする資料も多く(デルタ・ブルースの演奏家とする資料もある)、独特の高音のファルセットと不吉に響く短調の調弦で、他に類を見ない暗鬱な世界を作り上げた。録音の場所は人によって異なる。Pattonは1929年6月14日にリッチモンド(Gennett)で、同年11〜12月と1930年5月28日にはグラフトンで、1934年1〜2月にはニューヨークで録音し、Son House(1930年)とSkip James(1931年)はウィスコンシン州グラフトンのParamount社で録音し、Robert Johnsonは、1936年11月23・26・27日にサンアントニオのGunter Hotel 414号室で、1937年6月19〜20日にダラスの臨時スタジオ(508 Park Avenue、Vitagraph/Warner Bros.の建物)で録音した。臨時の場所で録音したのはJohnsonだけではない。いずれも当時の録音機材で、音質は決して良くない。しかし1960年代、イギリスやアメリカの若い白人音楽家たちがこれらの古いレコードを発掘・再評価したことをきっかけに、忘れられかけていたデルタブルースは、ロックの源流の一つとされるようになった。
代表曲
- Devil Got My Woman (Skip James)
- Hard Time Killing Floor Blues (Skip James)
- Death Letter (Son House)
- Terraplane Blues (Robert Johnson)
- Walkin' Blues (Robert Johnson)
- Pony Blues (Charley Patton)
- Hellhound on My Trail (Robert Johnson)
- High Water Everywhere (Charley Patton)
- Fixin' to Die Blues (Bukka White)
- Love in Vain (Robert Johnson)
- Big Road Blues (Tommy Johnson)
- Preachin' the Blues (Son House)
ルーツ(影響を受けたジャンル)
Blues
影響を与えたジャンル
Chicago Blues、 British Blues
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