Dub(ダブ)とは
レゲエの録音から歌や楽器を抜き差しし、残った音にエコーとリヴァーブを深くかけて作り直す、ミキシング卓を楽器として使う音楽。土台はドラムとベースだけのリディムで、重く長い音符を弾くベースが主役になり、ドラムは1拍目を空けて3拍目にバ
レゲエの録音から歌や楽器を抜き差しし、残った音にエコーとリヴァーブを深くかけて作り直す、ミキシング卓を楽器として使う音楽。土台はドラムとベースだけのリディムで、重く長い音符を弾くベースが主役になり、ドラムは1拍目を空けて3拍目にバスドラムとスネアを置くワンドロップが基本型。歌は一瞬だけ現れてはエコーの尾を引きながら消え、ギターやホーンの断片も同様に霧の中を出入りする。使う機材はスプリング・リヴァーブ、テープ・ディレイ(Roland Space Echoが定番)、高音域と低音域を削るフィルター、そして各パートを消したり戻したりするフェーダーそのもの。エンジニアが本番一発でフェーダーとつまみを操作し、その手つきが演奏になるため、同じ原曲から無数の別バージョンが生まれる。テンポは60〜90BPM前後と遅めのものが多く、音数が少ないぶん空間の広さと残響が消えていく過程そのものが聴かせどころになる。歌モノのレゲエと材料は同一だが、主役を歌からミックスの操作へ移した点が本質的な違いであり、のちのリミックスやエレクトロニック、ヒップホップに影響を与えたとされる。
成り立ち
1960年代末のジャマイカで、サウンドシステムという移動式の巨大音響装置を使った野外パーティーの文化から生まれた。各サウンドシステムは他所では鳴らせない自分専用の一枚盤(ダブプレート)を求めており、その競争が実験の動機になった。起源としてよく語られるのは1968年、キングストンのサウンド運営者Ruddy Redwoodが、Duke Reidのスタジオ(Treasure Isle)でダブプレートを切ってもらった際に、技師Byron Smithが歌の入っていないバージョンを誤って作ってしまい、それを試しに現場でかけたところ客が自分たちで歌い出して大受けした、という出来事である。この偶然から、シングルのB面に歌を抜いた「バージョン」を入れる習慣が定着した。技法として体系化したのはキングストンのウォーターハウス地区で修理工場を営んでいたOsbourne Ruddock——King Tubbyである。彼はByron LeeのDynamic Soundsから買った旧式のMCI製4トラックのミキシング卓を使い、任意の帯域を切り落とすフィルターとスプリング・リヴァーブを組み込み、演奏の途中で楽器を消し、残響だけを残して戻す操作を即興で行った。もう一人の巨人Lee Scratch Perryは1973年に自宅の庭にBlack Arkスタジオを建て、4トラックの機材に何度も重ね録りし、牛の鳴き声や割れたガラスの音まで混ぜた濃密で歪んだ音を作り出した。Augustus Pabloのメロディカを主役にした1976年の「King Tubby Meets Rockers Uptown」は、ダブの代表作として今も参照される。King Tubbyの工房からはPrince Jammy、Scientist、Prince Philip Smartといった技師が育ち、1980年代には彼らが主役になる。背景には、ラスタファーライの思想と1970年代ジャマイカの政治的暴力があり、音の空洞と深い残響はその緊張の反映として聴かれた。だが終わりは唐突だった。Black Arkは1979年にPerry自身が放火したとされる(家族は1983年の再建途中の電気事故による火災だったと証言している)。King Tubbyは1989年2月6日、自宅前で強盗に射殺された。それでも技法は生き延び、ロンドンではAdrian SherwoodのOn-U Soundがポストパンクとダブを結び付け、その後ジャングル、ダブテクノ、ダブステップへと連なっていった。
代表曲
- Dub Be Good to Me (Beats International)
- King Tubby Meets Rockers Uptown (Augustus Pablo)
- Super Ape (Lee "Scratch" Perry)
- Young Generation Dub (Augustus Pablo)
- Each One Dub (Augustus Pablo)
- Skanking Dub (Augustus Pablo)
- Scientist Rids the World of the Evil Curse of the Vampires (Scientist)
- Mango Drive (Rhythm and Sound)
- Your Teeth in My Neck (Scientist)
- King in My Empire (Rhythm and Sound feat. Cornell Campbell)
ルーツ(影響を受けたジャンル)
Reggae、 Hip Hop、 Dancehall
影響を与えたジャンル
Dub Techno、 Dubstep、 Jungle、 Trip Hop、 Post-Punk、 Deep Dubstep、 Illbient、 Hip Hop
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