Dub Reggae(ダブレゲエ)とは
既に完成した楽曲から要素を抜き去り、残されたものに極端な加工をして別の作品を作り出す手法であり、また様式でもある。中心にあるのは、録音のミキサーを楽器のように演奏するという発想で、技師は歌や管楽器の音量を一瞬で下げ、また戻し、ある
既に完成した楽曲から要素を抜き去り、残されたものに極端な加工をして別の作品を作り出す手法であり、また様式でもある。中心にあるのは、録音のミキサーを楽器のように演奏するという発想で、技師は歌や管楽器の音量を一瞬で下げ、また戻し、ある音だけを残して他を消すという操作を、演奏のように即興で行う。結果として残るのは低音と太鼓の骨格であり、この二つがどれほど強力かが、はっきり現れる。加工では、二つの装置が決定的な役割を果たす。ひとつは金属のばねを用いた残響装置で、これを叩くと雷鳴のような轟音が生まれ、効果として用いられたと伝えられる。もうひとつはテープを用いた遅延装置で、抜き去られた歌の一言や太鼓の一打が、山びこのように何度も反射しながら減衰していく。この操作によって、音は空間の中に置かれた物のように、立体的に並べられる。加えて、低い音域を削るフィルター(ハイパス)の操作により、ホーンなどの音が細く痩せていくような効果が作られる。テンポはレゲエと同じく遅く、曲の組み立ては原曲を保ちながらも、聴き手の予測を裏切る形で要素が出入りする。歌は断片としてしか現れず、意味を伝える役割を負わない。
成り立ち
歌抜きの「ヴァージョン」の起源には、次の逸話が伝わっている(Redwood本人の主張による)。1968年(1967年とする資料もある)、キングストンで、サウンドシステムの運営者Ruddy Redwoodが、Duke Reidのスタジオ、Treasure Isleで、The Paragonsの「On the Beach」の一枚限りの盤を作らせたところ、録音技師Byron Smithが誤って歌の入っていない音源にしてしまい、現場で流すと観客が自ら歌い出して熱狂したという。これを機に、レコードの裏面に歌抜きの演奏を収める慣行が広まった。エフェクトを使うダブの手法そのものは、1970年代にKing Tubbyらが発展させた。この偶然を芸術に高めたのがOsbourne Ruddockである。電気機器の修理を生業としていた彼は、キングストンの自宅に小さなスタジオを構え、録音卓を自ら改造したり、卓に内蔵されたハイパス・フィルター(低い音域を削る)を自在に操ったりして、ホーンなどの音を細くなるまで絞り込む手法を編み出した。King Tubbyの名で知られる彼のこの装置と手さばきが、この分野の音を作り上げた。もう一人の巨人がLee Perryである。彼は1973年に自宅の裏庭にBlack Arkというスタジオを建て、四つの録音経路しか持たない旧式の機材で、何重にも音を重ねる異様に濃密な作品を量産した。彼の制作は呪術的な儀式に近く、テープに大麻の煙を吹きかけたり、保護していないテープを屋外の土に埋めたりしたという証言も残る。1979年、彼は自らこのスタジオに火を放って焼失させたとされ、本人は「邪悪な霊のため」と説明している。ただし家族は、1983年の再建途中の電気事故による火災だったと証言し、諸説ある。King Tubbyのもとには弟子が集まり、なかでもHopeton Brownは、Scientistの名で1980年代前半に膨大な作品を残した。メロディカ奏者のAugustus Pabloは、King Tubbyとの共作で1976年にアルバム『King Tubbys Meets Rockers Uptown』を発表しており、その表題曲は史上屈指のダブとして評価が高い。しかし作り手の運命は過酷だった。King Tubbyは1989年2月、自宅の前で射殺された。強盗が原因と考えられているが、事件は未解決である。この様式が音楽史に与えた影響ははかり知れない。原曲を素材として作り替えるという発想は、リミックスという概念そのものを準備し、低音と空間を主役に据える思想は、ジャングルとドラムンベースの基盤となり、ダブステップに大きな影響を与え、ヒップホップやハウスなど多くのジャンルにも影響した。
代表曲
- Police and Thieves (Junior Murvin, produced by Lee 'Scratch' Perry)
- Dub Fire (Aswad)
- Heavy Weight Dub (Scientist)
- King Tubbys Meets Rockers Uptown (Augustus Pablo)
- Roast Fish and Cornbread (Lee 'Scratch' Perry)
- Dread Beat an' Blood (Linton Kwesi Johnson)
- Dub Station (King Tubby)
- African Dub (Joe Gibbs)
- Dub Me Crazy (Mad Professor)
- Dub from the Roots (King Tubby)
ルーツ(影響を受けたジャンル)
Reggae
影響を与えたジャンル
Roots Rock
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