Festival EDMとは
EDMの中でも、屋外の大規模フェスの主舞台で数万人を一斉に反応させることに合わせて作られた様式。BPMは128前後、ビッグルーム・ハウスと呼ばれる系統がその中核で、ドロップでは鋸波を何層も重ねた極太のリード音が、ほとんどメロディー
EDMの中でも、屋外の大規模フェスの主舞台で数万人を一斉に反応させることに合わせて作られた様式。BPMは128前後、ビッグルーム・ハウスと呼ばれる系統がその中核で、ドロップでは鋸波を何層も重ねた極太のリード音が、ほとんどメロディーを持たない短いフレーズをくり返す。特徴は音の多さではなく、むしろそぎ落とし方にあり、ドロップ後は低音のキックと1本の巨大なリード、そして時折入るシンバルだけになる。これは屋外で音が拡散し反響する環境でも輪郭が失われないようにするための作りで、室内で聴くと素っ気なく感じられるほど単純である。ビルドアップは長く、スネアの連打が4分音符から32分音符まで段階的に加速し、ホワイトノイズの上昇音とサイレン、そしてMCの煽り声が重なる。その頂点で全ての音が1秒ほど完全に停止する「無音」が置かれ、この空白が観客の期待を最大化する仕掛けになっている。和音は短調の4コードのくり返しが多く、ドロップ前のブレイクダウンでは感情を煽るピアノや弦の音、そして観客が合唱できる歌が挿入される。照明、レーザー、火柱、紙吹雪といった演出と拍単位で同期させることを前提に、曲の組み立てが完全に予測できる形で書かれている点が最大の特徴である。
成り立ち
2010年から2014年にかけて、EDMの商業的な最盛期に固まった。原型はプログレッシブ・ハウスとエレクトロ・ハウスを軸に、ダッチ・ハウスやトランスの影響も受けて成立した。Tiësto は2004年8月のアテネ五輪開会式で90分のセットを披露し、ダンス音楽をスタジアム規模の演出と結び付けるお手本となった。楽曲面での転換は、2010年前後のオランダ勢(Afrojack、Hardwell)とスウェーデン勢(Swedish House Mafia)によるもので、Afrojackの「Take Over Control」(2010年、ビッグルームに先立つエレクトロ・ハウス期のヒット)、Hardwellの「Spaceman」(2012年)、そしてSwedish House Mafiaの「One」(2010年)や「Don't You Worry Child」(2012年)が、ドロップの構造と観客の合唱を前提とした型を広めた。中でも2013年、当時17歳だったオランダのMartin Garrix が発表したAnimals は、極めてミニマルなドロップで象徴的で、英国など複数国で1位、米国のHot 100で21位となった。一方、ネット上では本人が作ったのかを疑う声も上がった。舞台となったのはベルギーのTomorrowland、米国のElectric Daisy Carnival とUltra Music Festival、そしてマイアミのMiami Music Week で、これらのフェスの映像がYouTube で数千万回再生されることが新曲を広める経路の一つとなった。産業面では、ラスベガスのカジノがHakkasan、Omnia といった大型クラブでDJに巨額の契約を提示し、レジデンシー(専属出演契約)が主要な収入源となった。批判は多岐にわたり、楽曲の構造が同一化したこと、DJが事前に用意した進行を再生するだけになったこと、そして薬物関連の事故が繰り返し起きたことが指摘された。2015年前後には市場が飽和し、トロピカル・ハウスやフューチャー・ベースといったより柔らかい音へ関心が移り、その後は関心が分散した。近年はフェス向けのドロップ素材への需要が再び伸びているという動きもある。ただしフェス自体は現在も世界規模で開催されており、この様式は「大会場で確実に機能する型」として定番の位置を保っている。
代表曲
- Tremor (Dimitri Vegas & Like Mike vs. Martin Garrix)
- Thank You (Not So Bad) (Dimitri Vegas & Like Mike, Tiësto, Dido & W&W)
- Boneless (Steve Aoki, Chris Lake & Tujamo)
- Spaceman (Hardwell)
- When I Grow Up (Dimitri Vegas & Like Mike feat. Wiz Khalifa)
- Rage the Night Away (Steve Aoki)
- Wildcard (KSHMR feat. Sidnie Tipton)
- Close To You (KSHMR)
- Calavera (Hardwell)
- Free the Madness (Steve Aoki)
- Dare You (Hardwell ft. Matthew Koma)
- Save The World (Swedish House Mafia)
ルーツ(影響を受けたジャンル)
Big Room House
影響を与えたジャンル
Melodic EDM、 Dark EDM、 Heavy EDM、 Pop EDM、 Big Room House
地図でFestival EDMのルーツをたどるには、JavaScriptを有効にして 音楽ジャンルルーツ辞典 を開いてください。