Melodic Techno(メロディックテクノ)とは
テクノの反復する構造に、感情を強くかき立てるメロディーと和音を組み合わせたダンス音楽である。テンポは概ね120から128 BPMで、キックは正確な四つ打ちを保ち、その音色は深く丸い。この土台の上に、この分野の主役である分散和音の音
テクノの反復する構造に、感情を強くかき立てるメロディーと和音を組み合わせたダンス音楽である。テンポは概ね120から128 BPMで、キックは正確な四つ打ちを保ち、その音色は深く丸い。この土台の上に、この分野の主役である分散和音の音型が置かれる。短調の和音を一音ずつ順に鳴らす音型が、遅延効果によって残響を伴いながら反復され、フィルターの開き具合が長い時間をかけて変化していく。この、少しずつ視界が開けていくような感覚が、曲の組み立ての中心である。和音の下地は映画音楽のように厚く、弦楽や合唱を模した音が長く伸ばされる。曲の作りはとても劇的で、静かな導入、要素の積み上げ、リズムを完全に落とす区間、そして最も感情的な頂点という流れが配置される。この頂点ではメロディーが最大の音量で鳴り、聴衆が一斉に手を上げることが見込まれている。人の声はほとんど用いられず、用いられる場合も加工された断片か、遠くで囁くような素材に留まる。ミニマル・テクノの禁欲的な簡素さとは対照的に、こちらは感情の盛り上げ方を隠さない。大規模な会場や精緻な映像演出と相性のよい音楽で、フェスでの存在感が大きいが、クラブでの演奏も一般的である。
成り立ち
2000年代のクラブ音楽では、ミニマル・テクノの禁欲的な簡素さが目立っていた。音を削り、感情を抑え、長い時間にわたって催眠のように続くことを目指すこの美意識に対し、2010年前後から、旋律と感情を取り戻そうとする動きが現れる。舞台となったのはベルリンとイビサ島である。ベルリンでは、Âme(Kristian BeyerとFrank Wiedemann)と、Dixonの名で活動するSteffen Berkhahnが2005年に設立したInnervisionsが、この方向の初期の形成に寄与した。ただしInnervisions自身は「Innervisionsの音というものはない」と述べており、軸にあるのはハウスの考え方である。ハンブルクで育ったSolomunは、自らのレーベルDiynamic(2005年設立)とイビサでの定期公演を通じて、旋律的で歌心のある音楽を国際的な聴衆に届けた。ほかの電子音楽のジャンルと結びつけて語られることも多い。大きな転機となったのはイタリアの2人組Tale of Usである。彼らは2016年からAfterlifeという名の催しを立ち上げ、音楽だけでなく、巨大な映像装置と照明を一つにまとめて作り込む方式を確立した。この形式は世界各地へ広がり、クラブやスタジアム、メキシコ・トゥルムのジャングルのセノーテなどで、大規模な映像付きの公演が行われるようになる。ドイツのStephan Bodzinは、アナログのシンセサイザーを実演奏する形式で、この分野に、演奏者としての説得力を与えた。この様式には強い批判もある。すなわち、テクノが本来持っていた、デトロイトの黒人労働者階級の状況やベルリンの地下的な自由という文脈を切り離し、見栄えのする商品にしてしまったという指摘である。実際、公演の入場料は高額で、聴衆の構成も従来のクラブとは大きく異なる。また、決まった位置に決まった感情の頂点を置くという定型化も指摘されてきた。それでも、大規模な会場で電子音楽が感情的な体験を提供しうることを示した点で、2010年代のダンス音楽を代表する現象であることは間違いない。
代表曲
- Solitary Daze (Maceo Plex & Gabriel Ananda)
- Singularity (Stephan Bodzin)
- Tie In (Acid Test) (Recondite)
- Astral (Tale of Us)
- Nova (Tale Of Us)
- Undulate (Recondite)
- Criseide (Mind Against)
- Io (Stephan Bodzin)
- Dark Song (Tale Of Us)
- Fiery (Recondite)
- On Acid (Recondite)
ルーツ(影響を受けたジャンル)
Techno、 Progressive House、 Progressive Techno
地図でMelodic Techno(メロディックテクノ)のルーツをたどるには、JavaScriptを有効にして 音楽ジャンルルーツ辞典 を開いてください。