Deep House(ディープハウス)とは
ハウスの四つ打ちの骨格に、ジャズとソウルの和声を持ち込んだ穏やかな系統。最大の識別点は和音の質で、単純な三和音ではなくメジャーセブンス、マイナーナインス、13thといった付加音を含む和音を使い、その響きが柔らかく濁ることで独特の温
ハウスの四つ打ちの骨格に、ジャズとソウルの和声を持ち込んだ穏やかな系統。最大の識別点は和音の質で、単純な三和音ではなくメジャーセブンス、マイナーナインス、13thといった付加音を含む和音を使い、その響きが柔らかく濁ることで独特の温かさが生まれる。Fender Rhodesのエレクトリックピアノ、Wurlitzer、ハモンドオルガン、そしてこれらを模したシンセ音色が中心に置かれ、アタックを弱めて長く伸ばす奏法で鳴らされる。テンポは110〜125BPMとハウスの中では遅めで、キックは前に出すぎないよう低域に沈め、ハイハットやシェイカーの細かい刻みで推進力を作る。ベースはシンセの丸い正弦波に近い音で、ルート音だけでなく経過音を含む歌うようなラインを弾き、しばしば拍の頭を外して置かれる。パーカッションにはコンガ、ボンゴ、シェイカーといったラテン系の楽器が加わることが多い。ヴォーカルは入る場合ソウルやゴスペル由来の伸びやかな歌唱か、あるいは語りに近い断片で、深いリヴァーブをかけて背景に沈められる。構成はドラマティックな展開を避け、8小節または16小節の単位で要素を静かに入れ替えながら6分から10分続く。歌詞は愛、自省、都市の夜、居場所を求める気持ちを扱う。テックハウスと比べて機械的な硬さがなく、ガラージやソウルフル・ハウスとは重なる部分が大きい。
成り立ち
1980年代半ば(1985〜86年)のシカゴとニューヨークで、初期ハウスの粗さに対する応答として生まれた。中心人物はシカゴのLarry Heardで、Mr. Fingersの名義で、1986年に発表した「Can You Feel It」と、1985年に発表した「Mystery of Love」が原点とされる。Heardはもともとドラマーで、17歳でジャズ・フュージョンのカバーバンドInfinityのドラマーとなり、家ではジャズやMotownを聴いて育った。Roland Jupiter-6とTR-707を購入し、初日の夜に「Mystery of Love」と「Washing Machine」の2曲を作った。彼の作品は当時のシカゴの荒々しいアシッド・ハウスとは対照的に、豊かな和声と余白を持ち、その静けさが逆に強い印象を残した。しかしHeard自身もTrax Recordsとの契約でほとんど収入を得られず、2020年にTrax Recordsを未払い印税で提訴した。ニューヨーク側では、Paradise GarageのLarry Levanが築いたガラージの美学が土台になった。Levanは1977年(84 King Street Garageとして開業し、1978年1月にParadise Garageと改称)から1987年までParadise Garageで、ソウル、ディスコ、レゲエ、ロックまで含む選曲と、自ら音響設備を調整する執念で伝説となったが、薬物依存が進み1992年に38歳で心不全により死去した。この系譜からKerri Chandler、Blaze、Masters at Work(Little Louie VegaとKenny Dope)が続き、ニュージャージーではTony Humphriesがクラブ Zanzibarを拠点に、より歌もの寄りのガラージ・ハウスを育てた。1990年代にはイギリスでも受容が進み、ロンドンのレーベルNuphonicやパリのRoulé、そしてドイツのCompostが独自の解釈を加えた。日本では2000年代にかけてクラブ文化の中で定着した。2013〜2014年前後、この名称は大きな混乱に見舞われる。イギリスやオーストラリアで、EDMの派生としてより商業的でテンポの速いポップな楽曲がディープ・ハウスと呼ばれるようになり、Duke Dumont、Disclosure、Route 94といったアーティストが商業的成功を収めた。さらに2010年代半ば以降、様々なベースライン主体のハウスが「ディープ」と呼ばれ、元来の意味と大きく乖離した。この事態は、2010年代半ばから後半にかけて「ディープ」の名が不適切に使われている、という批判を生んだ。以後、原型の系統は「クラシック・ディープ・ハウス」「ソウルフル・ハウス」と呼び分けられることが多い。近年は情報媒体のDeep House Amsterdamのほか、再発事業を行うRush Hour(オランダ)やMusic From Memoryが原点の作品を掘り起こし、Larry Heardは2010年代後半に再評価を受けて世界各地で公演を行っている。
代表曲
- My Love (Route 94)
- Latch (Disclosure)
- Sunset Lover (Petit Biscuit)
- Cola (CamelPhat)
- Hey Hey (Dennis Ferrer)
- Your Love (Frankie Knuckles)
- Jubel (Klingande)
- Benediction (Hot Natured feat. Ali Love)
- Superman (Black Coffee)
- Needin' U (David Morales)
- Mystery of Love (Mr. Fingers)
- My Head Is a Jungle (Wankelmut & Emma Louise)
- Deep Inside (Hardrive)
- French Kiss (Lil Louis)
- Look Right Through (Storm Queen)
- Atmosphere (Kerri Chandler)
- I Can't Get No Sleep (Masters at Work)
- Need U (100%) (Duke Dumont)
ルーツ(影響を受けたジャンル)
Chicago House、 Techno、 Boogie
影響を与えたジャンル
Techno、 Amapiano、 Tropical House、 Afro House
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