Tropical House(トロピカルハウス)とは
ディープ・ハウスの構造を土台に、テンポを落とし、南国の情景を思い起こさせる音色を乗せたダンス音楽である。テンポは概ね100から120 BPMと、通常のハウスより遅い。この速度が、くつろいだ雰囲気を作る。キックは四つ打ちを保つが、音
ディープ・ハウスの構造を土台に、テンポを落とし、南国の情景を思い起こさせる音色を乗せたダンス音楽である。テンポは概ね100から120 BPMと、通常のハウスより遅い。この速度が、くつろいだ雰囲気を作る。キックは四つ打ちを保つが、音量は抑えられ、角の丸い柔らかい音色が選ばれる。低音は太く滑らかで、和音の変化に合わせて動く。特徴的な要素は主旋律を担う音色で、パンフルート、スチールドラム、マリンバ、サックス、フルートなど、南国的で生楽器的な音色が用いられる。和音を支える音には、キックが鳴るたびに音量が一瞬押し下げられる処理(サイドチェイン)が深くかけられ、全体が呼吸するように脈打つ。和声は明るい長調の単純な進行が中心である。構成上の最大の特徴は、通常のダンス音楽が持つ、緊張を溜めて激しく解放するという型を意図的に和らげている点で、盛り上がりの部分でも音は攻撃的にならず、旋律が優しく前へ出るだけである。歌が入る場合は伸びやかな歌唱が用いられる。
成り立ち
呼称の起源は2013年頃、オーストラリアの制作者Thomas Jackが、自分の作る遅く穏やかなハウスを半ば冗談として南国のハウスと呼んだことにあるとされる。この語が定着したのは、それが指し示す音が、当時のダンス音楽の状況に対する明確な反動だったからである。2010年代前半のアメリカとヨーロッパでは、いわゆるエレクトロ・ハウスやビッグルームと呼ばれる、極端に音圧の高い攻撃的なダンス音楽が巨大な祭典を席巻していた。その疲弊への反動として、耳に優しく、日中に聴ける音への需要が生まれたのである。この流れを広げた中心人物の一人がノルウェーのKygoである。1991年生まれの彼は、当初、有名楽曲を穏やかに作り替えた音源をSoundCloudなどの共有サービスへ上げることで支持を集め、2014年に発表した自作の楽曲によって国際的な成功を収めた。ピアノを弾く姿と、南国的な音色による旋律の組み合わせは、この分野の標準となる。フランスのKlingandeが2013年に発表した楽曲、ドイツのRobin Schulzによる作り替え、そしてノルウェーのMatoma、ベルギーのLost Frequenciesが続いた。流通において大きかったのは、SoundCloudやSpotify、YouTubeといった配信サービスの存在である。ダンス音楽としては珍しく、クラブではなくこれらのサービス上で広まった。この音楽には批判もあった。すなわち、どの曲も同じに聞こえる、背景音として消費されるために作られている、という指摘もある。実際、2010年代半ばに最盛期を迎えた後は下火になり、Thomas Jack本人も2015年に、もうトロピカル・ハウスは好きではないと距離を置いた。ただし、遅いテンポで柔らかい音のダンス音楽という選択肢を主流に定着させた功績はあり、その質感は現在のポップスにも広く残っている。
代表曲
- I Took a Pill in Ibiza (Seeb Remix) (Mike Posner)
- Cheerleader (Felix Jaehn Remix) (OMI)
- Firestone (Kygo)
- Prayer in C (Robin Schulz Remix) (Lilly Wood & The Prick and Robin Schulz)
- Waves (Robin Schulz Remix) (Mr. Probz)
- Ain't Nobody (Loves Me Better) (Felix Jaehn ft. Jasmine Thompson)
- Stole the Show (Kygo)
- It Ain't Me (Kygo & Selena Gomez)
- Higher Love (Kygo & Whitney Houston)
- Show Me Love (Sam Feldt)
- Reality (Lost Frequencies ft. Janieck Devy)
- Sun Is Shining (Bob Marley & Robin Schulz)
ルーツ(影響を受けたジャンル)
Deep House、 Pop EDM
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