Merengue(メレンゲ)とは
ドミニカ共和国の国民音楽とされる、圧倒的に陽気で速いダンス音楽。編成の核は三つで、押し引きして音を出すボタン式アコーディオン、両面を革で張って一方を手、もう一方をばちで叩く筒型太鼓のタンボーラ、そしてハンマーと釘で凹凸を付けた金属
ドミニカ共和国の国民音楽とされる、圧倒的に陽気で速いダンス音楽。編成の核は三つで、押し引きして音を出すボタン式アコーディオン、両面を革で張って一方を手、もう一方をばちで叩く筒型太鼓のタンボーラ、そしてハンマーと釘で凹凸を付けた金属板を円筒形にした楽器ギラを硬いブラシでこするパーカッションである。この三点編成はペリコ・リピアオと呼ばれ、20世紀には、都市でオルケスタ(ビッグバンド)編成のメレンゲが別に発達した。拍子は2拍子(2/4で記譜されることが多く、4/4とする資料もある)で、テンポは速いもので1分あたり160拍を超える。特徴的なのはタンボーラのパターンで、手のひらが低い音を出しながら、ばちが細かい裏拍を刻み、ギラが16分音符を絶え間なく擦り続けることで、走り続けるような推進力が生まれる。ベースは拍の裏へ食い込むように動き、アコーディオンは高速の分散和音を息継ぎなく弾き倒す。曲の構成は、歌の部分から、掛け合いと器楽ソロが加速していくハレオと呼ばれる後半へ雪崩れ込む型が定番である。踊りは男女が組んで腰を左右に振りながら小刻みに歩くもので、サルサに比べて足の動きが単純なため、誰でもすぐ加われる点も普及を支えた。
成り立ち
19世紀半ばのドミニカ共和国、北部のシバオ地方の農村で形成されたとされる(正確な起源の日付はなく、1850年代の新聞記事が最古の記録である)。起源についてはハイチのメラング、キューバのウパ・ハバネラ、あるいはアフリカ由来の踊りなど複数の説が語られ、決着はついていない。成立当初から上流階級や知識人はこれを下品で猥褻な踊りとして敵視し、19世紀後半には新聞紙上で追放を求める論説が繰り返し掲載された。楽器編成が決定的に変わったのは19世紀末で、ドイツから輸入されたボタン式アコーディオンが、それまでの弦楽器に取って代わる。この楽器は音量が大きく扱いやすかった一方、ドミニカの旋律に必要な音を出せないという制約もあり、結果として独特の音使いが生まれた。地位を一変させたのは政治である。1930年から1961年まで独裁を敷いたRafael Trujilloは、自身が農村の出身であったこともあり、上流階級が蔑んでいたメレンゲを国家の音楽として公式に格上げした。楽団に自分を讃える歌を作らせ、サロンや放送で流すことを事実上義務づけ、歌詞や踊りは体制の宣伝装置として管理された。この政策によってメレンゲは全国民の音楽になったが、同時に独裁の記憶と切り離せない歴史も背負うことになる。1961年のTrujillo暗殺後、メレンゲは統制から解放され、Johnny VenturaのCombo Show(1964年創設)が、派手な振付、縮小した金管、サルサの影響で人気を得た。1970年代にはWilfrido Vargasがテンポを上げ、ディスコやロックを取り入れ、世界各地の流行を貪欲に取り込み、Fernando Villalonaらが続く。1990年代にはJuan Luis Guerraが洗練された和声と詩的で社会性のある歌詞を持ち込み、『Bachata Rosa』(1990)で国際的な成功を収めた。1980年代末〜90年代には、ニューヨークのドミニカ系移民の間で、Proyecto Uno(1989年結成)やFulanito(1996年結成)らが、メレンゲとハウスやヒップホップを融合し、メレンゲ・ウルバノが生まれた。ニューヨーク生まれのプエルトリコ系でプエルトリコ(グアイナボ)で育ったElvis Crespoは、Grupo Maníaを経てソロに転向し、「Suavemente」(1998)が世界的なヒットとなる。2000年代以降はバチャータとレゲトンに人気を奪われたが、祭りと選挙運動の現場では今も鳴り続けている。
代表曲
- Suavemente (Elvis Crespo)
- Tu Sonrisa (Elvis Crespo)
- Pégame Tu Vicio (Eddy Herrera)
- La Bilirrubina (Juan Luis Guerra)
- El Africano (Wilfrido Vargas)
- Como Abeja al Panal (Juan Luis Guerra)
- Es Mentiroso (Olga Tañón)
- A Pedir Su Mano (Juan Luis Guerra)
- Visa para un Sueño (Juan Luis Guerra 4.40)
- Woman del Callao (Juan Luis Guerra)
- Ojalá Que Llueva Café (Juan Luis Guerra)
- El Niágara en Bicicleta (Juan Luis Guerra)
- Patacón Pisao (Johnny Ventura)
- Muchacho Malo (Olga Tañón)
- Merenguero Hasta la Tambora (Johnny Ventura)
- Rosalía (Juan Luis Guerra)
- Abusadora (Wilfrido Vargas)
- Pintame (Elvis Crespo)
- El Venao (Wilfrido Vargas)
影響を与えたジャンル
Salsa、 Bachata、 Kompa / Compas
地図でMerengue(メレンゲ)のルーツをたどるには、JavaScriptを有効にして 音楽ジャンルルーツ辞典 を開いてください。