Sovietwave(ソビエトウェーブ)とは
ソ連時代の記憶と美学を主題とする、ロシア語圏発のシンセ音楽。テンポはSynthwaveより遅く、Vaporwaveより速い傾向があり、四つ打ちよりも緩やかな8分音符の刻みや、テンポの曖昧な漂う構成が好まれる。音色はソ連時代の東側で
ソ連時代の記憶と美学を主題とする、ロシア語圏発のシンセ音楽。テンポはSynthwaveより遅く、Vaporwaveより速い傾向があり、四つ打ちよりも緩やかな8分音符の刻みや、テンポの曖昧な漂う構成が好まれる。音色はソ連時代の東側で実際に使われた電子楽器、たとえばエリータ(Aelita)、アリサ(Alisa)、ポリヴォークス(1982〜1990年に生産)などのソ連製シンセサイザー、あるいはその音を模したソフト音源が基調で、西側の同時代機より粗く、フィルターの効きが荒い独特の質感を持つ。旋律は長く息の長い線を描き、素材としてソ連時代の科学啓蒙映画の挿入、国家指導者の演説、ラジオ局「Маяк」の呼出信号、ガガーリンの「Поехали!」、TASSの宇宙飛行報道などがサンプリングされ、これが世界観を決定づける。歌が入る場合は、宇宙、冬、故郷、未来といった主題が扱われる。実際に体験したソ連というより、後の世代が映像と伝聞から再構成した理想化された過去を鳴らす音楽であり、その意味でシンセウェイヴと構造的に同じ操作を、別の歴史に対して行っている。
成り立ち
2010年代前半、ロシアおよび旧ソ連圏のインターネット、とりわけソーシャル・ネットワーク・サービスであるVKontakteの音楽コミュニティを中心に形成された(コミュニティの創設者のブログは2014年に開設され、それ以前にも似た音を出す活動があったという)。シンセウェイヴの派生とされることが多いが、vaporwaveの旧ソ連版、retrowave/chillwave系とする見方もある。コミュニティの創設者の一人は、その雰囲気を、ニューレトロウェイヴがネオンとマイアミのドライブなら、ソヴィエトウェイヴはダーチャで過ごすのんびりした夏、子供時代、休暇の雰囲気、と説明している。前史として、ソ連時代の1967年には、モスクワのスクリャービン博物館にMurzin率いる実験電子音楽スタジオが開設され、作曲家Eduard Artemyev(映画監督アンドレイ・タルコフスキーの作品の音楽で知られる)が、ANSシンセサイザーという光学式の独自機材を用いて先進的な作品を残していた。また、1980年代にはZodiacというラトビアのスペース・ディスコのグループ(1980〜1992年に活動)が、ソ連で非常に人気だった。これらの遺産が後の世代に素材と規範を提供した。ジャンルの初期の中心として確認できるのは、ハリコフ(ウクライナ)のМаяк(Mayak、2013〜14年)である。ほかにKim and Buran、PPVK、Proton-4、Tvorozhnoe Ozeroなども挙がっており、インターネット上で作品を発表した。文化的背景は複雑で、この音楽が広まった2010年代は、ソ連崩壊後に生まれた世代が成人した時期であり、彼らにとってソ連は体験ではなく、親の話と古い映像の中にだけ存在する場所だった。その結果、この音楽が描くのは実際の抑圧や欠乏ではなく、宇宙開発の高揚や集団的な安心感といった選ばれた記憶である。この点は当初から批判の的でもあり、政治的な抑圧の歴史を美化しているという指摘、逆に単なる私的な郷愁であって政治的主張ではないという反論が並行して語られてきた。2022年以降の国際情勢の変化により、この美学は外部からより厳しい目で見られるようになり、シーンの一部は活動の場を国外へ移している。
代表曲
- Судно (Борис Рижий) (Molchat Doma)
- Sudno (dir. by @blood.doves) (Molchat Doma)
- Клетка (Molchat Doma)
- Танцевать (Molchat Doma)
- Звезды (Molchat Doma)
- Дочь серебра (ЗАГОВОР)
- Тебя (Муся Тотибадзе)
- Метель (СТЕРЕОПОЛИНА)
- Дети космических вьюг (Secrets of the Third Planet)
- Крайности (Второй этаж поражает)
- Зеленоглазое такси (Chernikovskaya Hata)
ルーツ(影響を受けたジャンル)
Synthwave
地図でSovietwave(ソビエトウェーブ)のルーツをたどるには、JavaScriptを有効にして 音楽ジャンルルーツ辞典 を開いてください。