Space Ambient(スペースアンビエント)とは
宇宙空間や天体の情景を音で描くことを主題としたアンビエントの一系統。中心となるのは、とてもゆっくり変化する広大なパッド音で、音の立ち上がりを完全に消し、数十秒かけて音量が立ち上がり同じくらい時間をかけて消えていく作りになる。音色は
宇宙空間や天体の情景を音で描くことを主題としたアンビエントの一系統。中心となるのは、とてもゆっくり変化する広大なパッド音で、音の立ち上がりを完全に消し、数十秒かけて音量が立ち上がり同じくらい時間をかけて消えていく作りになる。音色はアナログシンセのオシレータをわずかにずらして重ねたデチューン音、金属的な倍音を持つFM音源、そして無限に上昇し続けるように聴こえるシェパードトーンなどが使われる。空間の加工が曲の組み立てそのもので、数秒から数十秒に及ぶリヴァーブと、フィードバックを高く設定したディレイによって、音源の位置が特定できない広がりを作る。ステレオ幅を極端に広げ、左右で異なる残響を鳴らして三次元的な浮遊感を演出する。周波数の配置は下から上まで薄く均等に埋められ、中域に不自然な密集を作らないことで無重力感が生じる。リズムはほぼ存在せず、あってもシーケンサーによる規則的なアルペジオが遠くで脈打つ程度で、これはベルリン・スクールから受け継いだ表現になる。素材として実際の宇宙探査機の観測データを可聴域に変換した音や、無線通信の記録、パルサーの周期信号が使われることもある。曲は20分から1時間を超えることも珍しくない。ダークアンビエントと近いが、恐怖より畏敬と静寂に軸足があり、ニューエイジより無機質で人間中心的な癒しの意図を持たない点で区別される。
成り立ち
1970年代のドイツ、いわゆるベルリン・スクールの電子音楽が有力な源流の一つになった。1969年のApollo 11による月面着陸と、1970年代のVoyager計画に象徴される宇宙開発の熱狂が、電子楽器という当時最新の技術と結びついたことが背景にある。Tangerine Dreamは1967年にEdgar Froeseがベルリンで結成し、1974年の「Phaedra」でMoogのシーケンサーによる反復と広大なメロトロンの層を組み合わせ、Virgin Recordsから発表して国際的に成功した。同じくKlaus Schulzeは宇宙を主題としない、管弦楽の録音を加工したドローン作品だった1972年の「Irrlicht」以降、1曲が片面全体を占める長大な構成を確立し、宇宙を主題とする作風を深めた。Ash Ra Tempelのマヌエル・ゲッチングは1984年の「E2-E4」で、1時間近くにわたる単一のシーケンスを提示している。もう一つの重要な源流はフランスで、Jean-Michel Jarreが1976年の「Oxygène」を自宅の台所を改造したスタジオで録音し、Island Recordsなど複数のレーベルに断られたが、Disques Motors(Dreyfus)から発売され、世界で推定1800万枚(2016年)を売り上げた。彼は1979年にパリのコンコルド広場で100万人規模の野外公演を行い、電子音楽と巨大な光の演出を結びつけた。宇宙探査そのものと直接結びついた例としては、Vangelisの1976年「Albedo 0.39」が天文学の数値を主題にし、彼の音楽は後にCarl Saganのテレビシリーズ「Cosmos」(1980年)で使われ、2001年の「Mythodea」は探査機2001 Mars Odysseyのミッションの公式音楽になった。日本では冨田勲が1970年代にMoogでクラシック曲を電子化し、1978年の「宇宙幻想」ではクラシックなどの既成曲を宇宙のテーマで編曲した作品を制作している。1980年代初頭には、アンビエントやニューエイジから派生した「プラネタリウム音楽」と呼ばれる音楽もあったとされる。ノルウェーのBiosphereは1997年の「Substrata」で北極圏の荒涼とした情景を描き、この分野に極地と宇宙を重ねる視点を持ち込んだ。同時期にSteve Roach(アメリカ)、Robert Rich、Alio Die(イタリア)が活動し、2000年前後からはSolar Fields(スウェーデン)も加わり、Hearts of SpaceというアメリカのラジオHearts of Space番組が1973年から放送を続けてこの音楽の受け入れられる土台を作った。同名のレーベルも1984年に設立されている。2000年代以降は、宇宙を扱う映画やゲームの劇伴、そしてYouTubeでの睡眠用や作業用の長時間動画として大量に消費される形態が定着した。近年はNASAが公開する探査機のデータを可聴音に変換した素材が公開されており、科学的なデータと芸術表現の境界を曖昧にする作品も現れている。
代表曲
- Timewind (Klaus Schulze)
- Stratosfear (Tangerine Dream)
- Phaedra (Tangerine Dream)
- Rubycon Part One (Tangerine Dream)
- Apollo: Atmospheres and Soundtracks (Brian Eno)
- Structures from Silence (Steve Roach)
- Planetary Unfolding (Michael Stearns)
- The Slow Turning (Steve Roach)
- Heart of Compassion (Steve Roach)
- Genesis Voices / Sacred Site Theme (Michael Stearns)
- Shadowline (Robert Rich)
- Dark Passage (Michael Stearns)
ルーツ(影響を受けたジャンル)
Ambient
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