Spiritual Jazz(スピリチュアルジャズ)とは
1960年代から1970年代にかけて、宗教的、霊的な探求を目的として演奏されたジャズである。単一の様式ではなく志向を指す言葉だが、音の面には共通点が多い。基礎にあるのは旋法という手法で、和音の流れをほとんど持たず、低音が同じ音を保
1960年代から1970年代にかけて、宗教的、霊的な探求を目的として演奏されたジャズである。単一の様式ではなく志向を指す言葉だが、音の面には共通点が多い。基礎にあるのは旋法という手法で、和音の流れをほとんど持たず、低音が同じ音を保ち続ける上で、メロディーが長い時間にわたって展開される。この、音が伸び続ける効果によって、聴き手を日常的な時間感覚から引き離すことが意図されている。編成は通常のジャズの楽器に加えて、非西洋の楽器が積極的に導入される。ハープ、インドのシタール、中東の撥弦楽器ウード、各種の鐘や小型の打楽器、木製の笛などが用いられ、音の色彩は大きく広がった。打楽器奏者が複数在籍し、複雑な多層のリズムを刻むことも多い。管楽器の演奏は、旋律を美しく吹くことより、限界まで息を吹き込んで、倍音や割れた音を出す奏法が大切にされ、しばしば絶叫に近い響きに達する。声も用いられ、祈りや詠唱、独特の発声(Leon Thomasのヨーデルのような歌い方など)が多く使われる。曲は20分を超えることも珍しくなく、組曲として構成される場合も多い。
成り立ち
背景にあるのは1960年代アメリカの黒人の状況である。公民権運動の高揚と、それに伴う暴力、指導者の暗殺、そして社会の仕組みの根本が変わらないことへの絶望が重なる中で、多くの音楽家がキリスト教の主流派の外側に心のよりどころを求めた。イスラームへの改宗、東洋の宗教への傾倒、アフリカへの回帰といった選択が広く行われ、それが音楽に直接反映されたのである。決定的な作品は1965年、John Coltraneが発表したア・ラヴ・シュプリームである。四部から成るこの組曲は、彼自身の薬物依存からの回復と、それを可能にした神への感謝を明示した作品であり、装丁には彼自身による祈りの言葉が掲載された。宗教的な主題を前面に掲げたジャズは、1940〜50年代のサクレッド・ジャズ(Duke Ellingtonの『Black, Brown and Beige』やMary Lou Williamsの作品など)にすでにあったが、この作品はそれを個人の信仰告白として徹底し、以後の方向を決めた。彼は1967年に40歳で死去するが、その探求は妻のAlice Coltraneに引き継がれた。彼女はハープと電子オルガンを用い、インドの精神的伝統に深く帰依して、後年は宗教的指導者としてカリフォルニアで共同体を運営した。Pharoah Sandersは、荒々しい咆哮と穏やかな旋律を往復する演奏によって、1969年の楽曲で広い聴衆を得ている。Sun Raは、自らを土星から来た存在と称し、大人数の楽団を率いて、宇宙的な神話と黒人の解放を結びつけるという独自の思想を提示した。作る面では、Impulse!が主な受け入れ先となる一方、1971年には演奏者自身が運営するStrata-Eastが設立され、黒人が自らの音楽の権利を持つという実践も始まった。この分野は1990年代以降、ヒップホップの制作者が素材として再発見して再評価され、2010年代にはKamasi WashingtonやShabaka & The Ancestorsなど、影響を受けた若い演奏者が現れている。
代表曲
- Turiya & Ramakrishna (Alice Coltrane)
- Journey in Satchidananda (Alice Coltrane)
- Love Is Everywhere (Pharoah Sanders)
- Blue Nile (Alice Coltrane)
- The Creator Has a Master Plan (Pharoah Sanders)
- Space Is the Place (Sun Ra)
- Truth (Kamasi Washington)
- Astral Traveling (Pharoah Sanders)
- Thembi (Pharoah Sanders)
- Harvest Time (Pharoah Sanders)
- Soul Eyes (Pharoah Sanders)
- Enlightenment (Sun Ra)
ルーツ(影響を受けたジャンル)
Free Jazz、 Modal Jazz
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