Modal Jazz(モーダルジャズ)とは
和音の進行を追いかけて即興するのではなく、一つの音階の上に長くとどまって演奏するジャズの様式である。それ以前のビバップやハードバップでは、和音が2拍から4拍ごとに次々に変化し、演奏者はその変化に対応する音を瞬時に選び続ける必要があ
和音の進行を追いかけて即興するのではなく、一つの音階の上に長くとどまって演奏するジャズの様式である。それ以前のビバップやハードバップでは、和音が2拍から4拍ごとに次々に変化し、演奏者はその変化に対応する音を瞬時に選び続ける必要があった。この様式ではその制約を外し、一つの旋法を8小節、16小節、時にはそれ以上にわたって保持する。その結果、演奏者は和音を追う義務から解放され、旋律の輪郭、音色、間の取り方といった要素に集中できるようになる。用いられるのは長調と短調に限らない教会旋法で、ドリアやフリギア、リディアといった音階が選ばれ、それぞれ固有の色を持つ。和声の付け方も変化した。3度を積み重ねる従来の方式ではなく、4度を積み重ねる響きが好まれ、これによって長調とも短調ともつかない曖昧で開かれた音が生まれる。加えて、低音が同じ音を保ち続ける手法が多用される。テンポは、代表作のカインド・オブ・ブルーでは中庸から緩やかだが、ライブでは高速で演奏された例も多い。曲は長く、静けさと余白が重視される。演奏には緊張の解決が乏しいため、聴き手は物語の展開ではなく、持続する空間の中の変化を聴くことになる。
成り立ち
理論的な下地を用意したのは作曲家George Russellである。彼は1953年に発表した著作で、従来の和声理論とは異なる、旋法を中心とする音の組織法を提示した。当時としては極めて異端の理論だったが、若い演奏者に強い影響を与えている。この理論から影響を受けた演奏者たちが旋法による即興を実践し、その代表例となったのがMiles Davisである。彼はビバップの語法を極めた後、和音の数が多すぎることが即興の自由を奪っているという認識に至る。1958年の作品マイルストーンズでも旋法の手法が導入され、1959年に録音された作品カインド・オブ・ブルーは、この認識の結晶である。収録された楽曲のうち「So What」は二つの旋法だけで構成され、ほかの曲はブルース形式や循環形式、5つの音階を使う形など構造が異なる。演奏者には音階と旋律の断片だけが渡され、その場で提示された素材をもとに演奏された。ピアノのBill Evansは、4度を積み重ねる和声によって、従来のジャズにない透明な響きを作っている。この作品はジャズのアルバムとして最も売れた作品とされ(米国で500万枚を示す5×プラチナの認定を受けている)、その静けさは音楽の分野を超えて広く受け入れられた。参加していたJohn Coltraneは、この方向をさらに突き詰める。彼は1960年代前半、自らの四重奏団において、旋法の上で長時間にわたり音を積み上げ続けるという演奏を確立した。ピアノのMcCoy Tynerが4度の和音を叩き、ドラムのElvin Jonesが複数の拍節を同時に進行させ、その上でJohn Coltraneが延々と探索を続けるという形は、ジャズの新しい可能性を示した。Herbie Hancockは1965年の作品で、この語法をより静謐で色彩的な方向へ展開している。この様式の影響は極めて広い。少ない和音の上で長く演奏するという発想は、ロックの即興にも及んでおり、1970年にはAllman Brothers BandのDickey Bettsが「All Blues」を土台にした曲を書いている。
代表曲
- My Favorite Things (John Coltrane)
- Footprints (Wayne Shorter)
- Impressions (John Coltrane)
- Maiden Voyage (Herbie Hancock)
- Naima (John Coltrane)
- Infant Eyes (Wayne Shorter)
- Dolphin Dance (Herbie Hancock)
- Contemplation (McCoy Tyner)
- Passion Dance (McCoy Tyner)
- Juju (Wayne Shorter)
- Afro Blue (John Coltrane)
ルーツ(影響を受けたジャンル)
Bebop、 Cool Jazz
影響を与えたジャンル
Free Jazz、 Post-Bop、 Spiritual Jazz、 Third Stream
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