Trap Soul(トラップソウル)とは
トラップの打ち込みビートの上で、R&Bのなめらかな歌を聴かせる2010年代半ばの様式。土台はRoland TR-808由来の長く伸びる低音で、音程を滑らせるスライドによってメロディーを奏でる楽器のように働く。ハイハットは16分から
トラップの打ち込みビートの上で、R&Bのなめらかな歌を聴かせる2010年代半ばの様式。土台はRoland TR-808由来の長く伸びる低音で、音程を滑らせるスライドによってメロディーを奏でる楽器のように働く。ハイハットは16分から32分、時に3連符へ細かく分割される高速な連打(ロール)を刻み、スネアやクラップは3拍目に置かれるハーフタイムの感覚を作る。表記上のテンポは130〜145BPMだが、体感はその半分でゆったりしている。上物は減衰の長いピアノやベル、ぼやけたシンセのパッドで、和音は短調の四つのコードを静かにくり返す。歌い方はオートチューンで音程を補正した、囁くように歌う声と早口のラップの中間を行き来し、同じ声を何重にも重ねて霧のような厚みを作る。歌詞は誇示ではなく、報われない関係、疑心、孤独、夜の車中といった内向きの場面を扱うことが多い。ミックスは全体を暗く、低音を過剰なほど強調し、上物には深い残響をかけて距離感を出す。ソウル由来の温かい歌唱を軸にした従来のR&Bに対し、こちらは電子的な冷たさと空虚さを美点とする点が違う。
成り立ち
2014年(原型となる曲の登場)から2015年(呼称の定着)にかけて、アメリカ南部のトラップと、カナダ・トロント発の内省的なR&Bが交わる場所で形になった。その素材は2010年代前半に整っており、前提となったのは、2011年にThe Weekndが無料で公開した「House of Balloons」である。薬物と性の荒廃を、暗く残響の深い音響で描いたこの作品は、R&Bが誘惑や祝祭ではなく虚無を歌えることを示した。同じトロントでは、Drakeと、その専属の録音技師で制作者でもある40(本名Noah Shebib)が、こもった低音と広い残響を特徴とする音作りを確立し、2011年の「Take Care」で大衆化させる。並行してアトランタでは、FutureやYoung Thugがオートチューンを補正の道具ではなく歪んだ質感を得るための楽器として使い、歌とラップの境界を溶かしていった。この二つの流れを一つの様式として広めたのが、ケンタッキー州ルイヴィル出身のBryson Tillerである。彼は2014年10月にSoundCloudに投稿した「Don't」が話題となり、2015年に発表したデビュー・アルバム「T R A P S O U L」の題名がジャンルの呼称を広め、定着させた。先行してPARTYNEXTDOORがDrakeのレーベルOVO Soundから(2013年に契約)、続いて6LACKやOVO Soundのdvsnらが同傾向の作品を出し、2015年から2017年にかけて主流の一角を占める。制作面ではMetro Boomin、Southside、Wheezyといったトラップの制作者が歌モノにも関与し、808のスライドとハイハットのロールという語彙を共通言語にした。流通の側では、SoundCloudという無料の投稿場が大きな役割を果たした。レコード会社を通さずに音源を公開し、そこから契約に至るという経路が一般化し、多くの作り手がこの道筋で登場している。2019年にはSummer Walkerがデビュー・アルバム「Over It」で大ヒットし(ジャンル表記はR&Bで、トラップ・ソウルに入れるかは見方が分かれる)、以後は「オルタナティヴR&B」というより広い呼称に吸収されつつも、その音の作り方は現代R&Bの音作りに大きな影響を与えた。
代表曲
- Often (The Weeknd)
- PRBLMS (6LACK)
- Girls Need Love (Summer Walker)
- Playing Games (Summer Walker)
- Come and See Me (PARTYNEXTDOOR)
- Dead Man Walking (Brent Faiyaz)
- Sorry Not Sorry (Bryson Tiller)
- Clouded (Brent Faiyaz)
- Rambo (Bryson Tiller)
- Ex Calling (6LACK)
ルーツ(影響を受けたジャンル)
Trap、 Soul、 Alternative R&B
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