Art Rock(アートロック)とは
ロックの編成と流通を使いながら、目的を娯楽ではなく芸術表現に置いた音楽である。最大の特徴は録音スタジオを楽器として扱う姿勢で、テープの逆回転や速度変更、切り貼り、多重録音、位相をずらして生まれるうねりといった、演奏では再現できない
ロックの編成と流通を使いながら、目的を娯楽ではなく芸術表現に置いた音楽である。最大の特徴は録音スタジオを楽器として扱う姿勢で、テープの逆回転や速度変更、切り貼り、多重録音、位相をずらして生まれるうねりといった、演奏では再現できない操作が作品の中核に据えられる。楽器編成も自由で、Mellotronのようなテープ再生式の鍵盤楽器、VCS3などの初期のシンセサイザー、弦楽四重奏、管楽器、非西洋の楽器、さらには機械音や現場録音までが等価に扱われる。和声はロックの三和音から離れ、不協和音、教会旋法、無調に近い響き、そして現代音楽由来の持続音を用いる。拍子も4/4に留まらず、変拍子や拍節感を失わせる構成が現れる。曲の長さは一定せず、20分を超える組曲もあれば1分に満たない断章もあり、アルバム全体を一つの作品として通して聴かせる設計が好まれる。歌詞は物語、哲学的な問い、社会批評、あるいは意味を成さない音の連なりを扱い、歌わずに語る形式も採られる。アートロックとプログレッシブ・ロックは互換的に使われることもあり、区別は論者による。
成り立ち
背景としてまず重要なのは、イギリスの美術学校である。1950年代から1960年代のイギリスでは、美術学校は、米国と比べて産業向けでないカリキュラムで、風変わりな才能を伸ばす場であり、John Lennon、Keith Richards、Pete Townshend、Ray Daviesらがそこで学んでいた。Roxy MusicのBryan Ferryはニューカッスルでポップアートの先駆者Richard Hamiltonに師事しており、大衆文化を素材として扱う思考をそのまま音楽へ持ち込んだ。1966年にThe Beach Boysが発表したペット・サウンズと、翌1967年にThe Beatlesが発表したサージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンドは、ライブでの再現を前提としない録音作品というあり方を示し、レコードが記録ではなく作品そのものになりうることを証明した。同時期のニューヨークでは、現代音楽家La Monte Youngのもとで持続音の実験を重ねたJohn CaleがLou ReedとともにThe Velvet Undergroundを結成し、Andy Warholの後援を受けて、美術の文脈とロックを直接接続した。1969年にKing Crimsonが発表したイン・ザ・コート・オブ・ザ・クリムゾン・キングは、Mellotronによる重厚な響きと不穏な構成で新しい水準を示し、Pink Floydは長尺の音響作品を大衆的な成功と両立させた。1970年代半ばに決定的な役割を果たしたのがBrian Enoで、彼はRoxy Musicを離れた後、演奏技術を持たないことを利点と捉え、偶然性を制作に組み込む手法を提唱した。通称ベルリン3部作(『Low』『"Heroes"』=1977年、『Lodger』=1979年)として知られるDavid Bowieの作品群、とりわけEnoとの共同作業は、アートロックの要素をほかのポピュラー音楽へ取り入れた例とされる。1980年にEnoが手掛けたTalking Headsのリメイン・イン・ライトは、西アフリカのリズムの循環構造をロックへ導入し、この分野の到達点のひとつとされる。商業性との緊張は常につきまとい、実験が高じて聴かれない作品も多く生まれたが、スタジオを楽器として扱うという発想自体は完全に一般化し、現在のポップスや電子音楽の制作の前提となっている。
代表曲
- More Than This (Roxy Music)
- Wuthering Heights (Kate Bush)
- Street Spirit (Fade Out) (Radiohead)
- Life on Mars? (David Bowie)
- Avalon (Roxy Music)
- Ashes to Ashes (David Bowie)
- Wonderous Stories (Yes)
- Marquee Moon (Television)
- Virginia Plain (Roxy Music)
- This Town Ain't Big Enough for Both of Us (Sparks)
- In Every Dream Home a Heartache (Roxy Music)
- Third Uncle (Brian Eno)
- Do It Clean (Echo & the Bunnymen)
- Making Plans for Nigel (XTC)
- Venus in Furs (The Velvet Underground)
- Paranoid Android (Radiohead)
- Solsbury Hill (Peter Gabriel)
ルーツ(影響を受けたジャンル)
Rock、 Avant-Garde
影響を与えたジャンル
Progressive Rock、 Art Pop、 Pop Rock、 No Wave
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