Enkaとは
こぶしと呼ばれる細かい声の揺らしを最大の武器とし、耐える情感を歌い上げる日本の大衆歌謡。音階は長音階から第4音と第7音を抜いたヨナ抜き音階、あるいは短音階から同様に音を抜いた都節系の音階が中心で、この音の選び方が独特の哀感を作る。
こぶしと呼ばれる細かい声の揺らしを最大の武器とし、耐える情感を歌い上げる日本の大衆歌謡。音階は長音階から第4音と第7音を抜いたヨナ抜き音階、あるいは短音階から同様に音を抜いた都節系の音階が中心で、この音の選び方が独特の哀感を作る。歌唱ではこぶしのほかに、語尾を震わせるビブラート、息を混ぜてかすれさせる発声、意図的に音程へ下から入るしゃくりといった技法が体系化されており、これらの使い分けが歌手の個性そのものになる。伴奏は弦楽合奏とギター、和太鼓や三味線、尺八といった邦楽器を織り交ぜ、間奏では尺八やサックスが主旋律を吹く。遅めの曲が多いが、拍子・テンポは曲ごとに異なり、曲の後半に転調して盛り上げる型が多い。歌詞の主題は、報われない恋、別れ、酒、雪や海や港といった北国の風景、故郷への思い、母への感謝が繰り返し歌われてきたが、中高年女性の支持を得て「夫婦」も主題に加わった(「ふたり酒」1980年、「だんな様」1983年)。三番構成が定型で、一番と二番で情景を語り、三番で心情を締める。歌手は着物やタキシードで直立して歌い、身振りを抑えることで声の表現に集中させる点も様式の一部である。
成り立ち
語源は明治時代にさかのぼる。自由民権運動の活動家たちが、演説を禁じられた際に主張を歌にして街頭で売り歩いた演説歌が略されて演歌となった。明治末から大正にかけては添田唖蝉坊らが社会風刺を歌う演歌師として知られ、ヴァイオリンを伴奏に街角で歌う姿が定着する。ただし、現在の演歌と呼ばれる音楽の直接の母体は、昭和初期の流行歌である。1931年、古賀政男が作曲し藤山一郎が歌った「酒は涙か溜息か」は、ギターの音色と切ない旋律で大衆をつかみ、いわゆる「古賀メロディー」の型を確立した。戦後は美空ひばりが登場する。1947年に9歳でデビューし、1949年、12歳で「悲しき口笛」を歌って出世作とした彼女は、1989年の没まで約40年にわたって日本の歌謡界の中心に立ち続けた。1960年代に入ると、ジャズやロックの影響を受けたポップスと、日本的な情感を守る歌との区別が意識されるようになり、後者を指す名として演歌の語が再利用される。1950年代には春日八郎(1952年デビュー)や三橋美智也(1954年デビュー)が活躍し、この時期には北島三郎(1962年)、都はるみ(1964年)、五木ひろし(1965年に別の芸名でデビュー)といった歌手が現れ、作曲家では船村徹、猪俣公章、市川昭介、作詞家では星野哲郎、なかにし礼が量産の体制を支えた。阿久悠が演歌を手がけたのは主に1970年代以降である。1970年、藤圭子の「圭子の夢は夜ひらく」は、影のある低い声と暗い歌詞で当時の若者にまで届き、演歌の表現の幅を広げている。1951年にラジオ番組として始まり、1953年12月からテレビ放送になった「NHK紅白歌合戦」と、地方を回る歌謡ショー、そして有線放送は、いずれも普及の要因の一つだった。1977年に発売された石川さゆりの「津軽海峡・冬景色」は国民的に知られ、1980年代にも細川たかしらが活躍した。一方で、カラオケの普及により歌詞・曲調・歌唱技法が均質化し、1980年代後半にはカラオケボックスの普及で演歌の占めるシェアが狭まった。聴き手の高齢化も進み、若い世代はニューミュージックなどへ移っていった。1990年代以降は市場が縮小し、業界は氷川きよしのような若手の売り出しで対応する。近年は演歌の様式を意図的に借りたポップスや、海外での再評価も見られ、日本人の情感を代表する音楽という位置づけ自体が問い直されている。
代表曲
- 舟唄 (八代亜紀)
- 津軽海峡・冬景色 (石川さゆり)
- 北国の春 (千昌夫)
- 海雪 (ジェロ)
- おふくろさん (森進一)
- 兄弟船 (鳥羽一郎)
- 襟裳岬 (森進一)
- 雨の慕情 (八代亜紀)
- まつり (北島三郎)
- 悲しい酒 (美空ひばり)
- 圭子の夢は夜ひらく (藤圭子)
- 北の宿から (都はるみ)
- 函館の女 (北島三郎)
- 川の流れのように (美空ひばり)
- 天城越え (石川さゆり)
- 与作 (北島三郎)
- 王将 (村田英雄)
- 矢切の渡し (細川たかし)
- 酒は涙か溜息か (藤山一郎)
- よこはま・たそがれ (五木ひろし)
- 北酒場 (細川たかし)
- 氷雨 (佳山明生)
ルーツ(影響を受けたジャンル)
Folk、 Classical、 Min'yō、 Mood Kayō、 Kayōkyoku、 Trot
影響を与えたジャンル
J-POP、 Mood Kayō、 Trot
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