Lo-fi(ローファイロック)とは
録音の質の低さを、欠点ではなく作品の一部として提示する音楽である。名称は忠実度の低さを意味する語に由来する。具体的には、テープの走行によって生じる持続的な雑音、音量が過大なために生じる歪み、録音機の限界による高音域の欠落、マイクか
録音の質の低さを、欠点ではなく作品の一部として提示する音楽である。名称は忠実度の低さを意味する語に由来する。具体的には、テープの走行によって生じる持続的な雑音、音量が過大なために生じる歪み、録音機の限界による高音域の欠落、マイクから離れて録られた不明瞭な声、そして機材の不調による音の途切れが、修正されないまま残される。これらは通常の制作では取り除かれるべきものだが、ここではそれこそが親密さと誠実さの証と見なされる。演奏も同様で、音程の揺れ、拍のずれ、弦の擦れる音、演奏中の咳や物音が残される。編成は簡素で、一人で全ての楽器を重ねて録音する場合が多い。楽曲そのものは意外にも整っていることが多く、旋律は美しく、和声も工夫されている。この、丁寧に書かれた歌が粗い録音で提示されるという落差が、この分野の情緒を作る。曲は短く、2分程度のものも珍しくない。歌詞は日常の些細な出来事、内面の混乱、自意識、そして孤独を扱い、比喩を凝らさず日記のように書かれる。聴き手は、完成された商品ではなく、誰かの部屋の中を覗いているような感覚を得る。
成り立ち
「ローファイ」という語は少なくとも1950年代からあり、1980年代にこの語と美学が定着したとされる。技術的な前提は1979年にある。この年、日本の企業がカセットテープに四つの音を別々に記録できる小型の機材を発売した。家庭用のオープンリール式の4トラック録音機は1970年代半ばからあったが、カセット式のこの機材によって、宅録は一気に安価で身近になった。これは音楽制作の民主化として、後のパソコンによる制作に匹敵する意味を持っていた。この可能性を早くから体現した一人がR. Stevie Mooreである。彼は1960年代後半から自宅で膨大な数の作品を録音し続け、1982年にはカセットの通信販売を始めた。宅録の過程そのものを美学にした先駆者と評される。テキサス州のDaniel Johnstonは、精神の病を抱えながら、安価なテープ録音機に歌を吹き込み、自ら複製して手渡しで配った。その素朴で痛ましい歌は、後に多くの音楽家に愛され、彼は2019年に死去するまで独自の位置を占め続けた。1980年代のワシントン州オリンピアでは、Calvin JohnsonがK Recordsを設立し、演奏技術を持たないことを積極的に肯定する文化を作る。1990年代前半、この美学は主流の近くまで達した。オハイオ州のGuided by Voicesは、ポータスタジオで録音した膨大な断片的な楽曲を発表し、カリフォルニアのPavementは、低予算の自宅スタジオ録音による粗い音で注目され、批評家の高い評価を得る。Eric GaffneyとともにSebadohを結成したLou Barlowは、内省的な歌をテープの雑音とともに提示した。1994年、Beckが発表した作品は、この美学を主流の市場へ持ち込んでいる。2000年代以降、パソコンによる録音が普及して、粗い音は技術的な必然ではなくなった。それにもかかわらず、この質感は選択として残り続けた。「ローファイ」という語や質感は、後のローファイ・ヒップホップなど現代の音楽にも共有されている。
代表曲
- True Love Will Find You in the End (Daniel Johnston)
- Cut Your Hair (Pavement)
- Gold Soundz (Pavement)
- Game of Pricks (Guided by Voices)
- The Sun Was High (So Was I) (Best Coast)
- Rebound (Sebadoh)
- Summer Babe (Pavement)
- Indian Summer (Beat Happening)
- I Am a Tree (Guided by Voices)
- Speeding Motorcycle (Daniel Johnston)
- Where Do You Run To (Vivian Girls)
- King of the Beach (Wavves)
ルーツ(影響を受けたジャンル)
Indie Rock、 Punk Rock
影響を与えたジャンル
Bedroom Pop
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